RECORD

Eno.426 䝰甾 うのはなの記録

真面目に考えてみよう

※俺へ
 真面目に考えてください。



自分向けの注釈をつけたので、ことの次第をまとめてみる。
ここ数日の……ことについて。とある人の。
名前は伏せておく。念のために。


触るのが苦手であること。

前から、そうじゃないかなとは思っていた。
というのも、そちらの文化はかなり接触文化なのは…まあ、いろんな知人のいる中でそれは分かっていて。
そちらから来た人間が一切、接触をしないふるまいを三年続けている、のを見ているわけで。
ただ、この間までは、そういう性格なのかな、と思っていた。

インターンのことを通して、『苦手』なんだと知った。

でも俺を労わるために肩に触れて、それから、
「お前は嫌ではなかったのか」と、俺に向かって、そう聞いた。
その時、もしかしたらこの人は、自分が与える影響を厭っているのか、と思った。



分からないけれど、それがもし真実なら、
どうにか…(もちろん、俺が触れるためとか、触れられるためとかではない)(それはさすがに、そこまで利己的にはなれない。あれほど苦しそうに語っていた相手だ)
なにか、思いを変えてやりたいとおもって、ケーキを口実に訪ねてやった。

バナナのパウンドケーキ。
受験期に頑張ってよかった、と思うことがこっちでもあるとは思わなかったな。
不思議と、随分喜んでいた。
『酷い』生活をしていたのだという。自分にも他人にも。
甘いものを食べるような習慣がなかったから、『家の味だ』と感じてしまった、と。

だからすこしだけ踏み込んでみようと思った。
言いたそうにしていたから。
言いたいけど言えない風で、そして、本人は『酷い』ときに戻りたくない、というから。
錠前の内側を無遠慮に探る真似はするべきじゃないと思っているけれど、
手を出したとき、手を取れるようなら、差し出すべきでもあるのではないかと思って。


載せられた言葉はとても重かった。
とても。
ここには書くべきではないだろう。
俺はそれを深く聞いているわけじゃない。これから聞くことになるかもしれないが、今じゃなかった。
「その重さ」で、俺が逃げるならその方がいいと思っていたのかもしれない。
言葉を載せる前に、そのようなことを言っていた。


いくつか、それについて確認したのち、「帰れ」とかいうので、
さすがにキレて泊まった。
つまり俺を逃がそうとしたわけだ。なんてやつだ。

おそらくあいつにとっては困ったことに、俺からの印象とか好意は全然変わっていない。
過去の言動の「意味合い」がいくつか理解できた、というところだ。
珍しいことではないと思う。
家族が『酷いこと』を為して、それでも家族を家族だと呼べる人間も少なくはない。
酷いことを酷くないと否定するひともいるだろう。
酷いことをした罪をともに償おうとするひともいるだろう。
家族と呼べなくなるひともいるだろう。
少なくとも俺は、最後のものではなかった。


ただ、今の時点でそれを主張して、あいつの思う「まっとうな判断」というものからあいつをかばうような言動は避けるべきだとも思った。
向こうにも伝えたが、俺は『酷いこと』や『酷い暮らし』から遠い生き方をしてきている人間だ。
その環境にある言葉が、あいつにとって重く捉えることができる言葉になるかどうかは、怪しい。
逆に傷つけてしまうのではないかとも思う。よく考えるべきだし、よく学ぶべきだ。
そうしたって、所詮は机上のものでしかないだろうけれど、それでも……理解しようと試みることは必要だと思う。

図書館でそういう本を読むのは、怪しまれたりするだろうか?
為すべき償い(公的に、定められたもの)はしていたというから、構わないものかもしれないが…本人は絶対に知られたくないだろう。なるべく目立たないようにふるまいたい。



今後の課題を箇条書きにしておこう。

・学ぶ。裏表含めて、『酷いこと』について…受け止めるために必要なものがなにか、把握しておくこと。
・家族であるという形を、忘れずに保つ。あんなことを言わせたあとに、遠慮させちゃいけない。
・触れる、ということの、安全な境界を改めて示す。これは焦らない。
 でも人間にはハグが必要だ。あいつは人間であるのだから、人間に必要なものはきちんと提示したい。示したあと、吟味するのはあいつの仕事だ。
・だから、拒絶されても、くじけない。


最後はちょっと難しいな。
でも、その理由がわかりつつあるから、多少挫けても立ち直れると思う。

嫌われるのを怖がってるようじゃ、家族を名乗ってられない。
尊重しつつ、でも、少しずつ、なんだろうな。
あいつが、『しても大丈夫』と思えることを増やしていけたらいいな、と思う。
人生で当たり前のことに「ダメ」ってチェックを自分で入れ続けるような生き方は、絶対、しないほうがいいから。



泊まった朝に、握手を誘ってみた。
あいつは舌打ちしていたけれど、握手ができた。
ちょっとうれしい。けっこううれしいかも。
でもあんまり浮かれないでいてやりたいな。
あいつの言葉をしっかり考えていってから、改めて浮かれるために、とっておく。