RECORD

Eno.712 茅鳴 ほみの記録

茅鳴直生の日誌 #10

ほみが夕飯を用意してくれた。
魚と野菜と汁物と米が揃った、完璧な一汁三菜だった。

「どうでしょう 生まれ変わったほみのごはんは」


どうも何も、どうしたんだよ。

「じつはね ひとにお弁当をたべてもらうきかいがあり
 そのとき言われて 先生が言ってたことも
 ようやく理解できた そんなかんじです」

「おいしいですか?」

「うっ」


美味い、はなんとか言うことができたが、色々ツッコミどころがある。
弁当だったのは肉の日だったが、まさかあれ人に食わせたのか、とか。
俺が毎度説明した栄養バランス、その程度で修正されたのか、とか。

美味いのは本当だ。
内容が偏ってた時から、調理と味付けはしっかりできてた。
一度レシピとその読み方を教えたら、後はすんなり自炊をこなして。

食器を洗うあいつはなんだかうれしそうだ。
どこまでも、人間の少女のように。
多分、俺が見てないところでも。

ほみはどんどん、枠に収まっていく。
俺が与えた人間という枠に、常識という枠に。
形のなかったあの暗闇が、ルールの中に押し込められて。
あいつは“いい子”として社会に溶け込む。

お前を“わからない”と俺が思うのは、
俺だけがお前がほみでなかったのを知っているからだ。

ああでも、わからないから、
こんなに心を許せてしまっているのかもな。