RECORD
Eno.50 架川琳司の記録
七夕の記憶
雨上がりの道路を小走りに進んだ。
昼の空は灰色の雲に覆われていて、脇道の薄暗い場所ではもう街灯がついていた。
水たまりの飛沫がズボンの裾を濡らすのにもかまわず進むと、
少し息が弾む頃には通学路の黄色い標識が見えてきた。
そこの角を曲がれば家に着く、その思いが更に足を急がせた。
よく知る色をした空、日々通ってきた道筋、見知った路上の景色。
自宅までの道行きを経てようやく、自分の暮らす世界に戻ったのだと実感した。
「おかえりなさい」
リビングに入るとキッチンに立つ母から声がかかった。
聞き慣れた出迎えの言葉に強張った肩の力が抜けていった。
あとは乱れた息を落ち着かせながら普段通りに返事をすればそれでよかった。
「―――あのさ、……」
変わらない言葉に守られていた、かけがえのない日常
変わってしまった自分が壊した、二度と帰れない場所。
昼の空は灰色の雲に覆われていて、脇道の薄暗い場所ではもう街灯がついていた。
水たまりの飛沫がズボンの裾を濡らすのにもかまわず進むと、
少し息が弾む頃には通学路の黄色い標識が見えてきた。
そこの角を曲がれば家に着く、その思いが更に足を急がせた。
よく知る色をした空、日々通ってきた道筋、見知った路上の景色。
自宅までの道行きを経てようやく、自分の暮らす世界に戻ったのだと実感した。
「おかえりなさい」
リビングに入るとキッチンに立つ母から声がかかった。
聞き慣れた出迎えの言葉に強張った肩の力が抜けていった。
あとは乱れた息を落ち着かせながら普段通りに返事をすればそれでよかった。
「―――あのさ、……」
変わらない言葉に守られていた、かけがえのない日常
変わってしまった自分が壊した、二度と帰れない場所。