RECORD

Eno.1718 田中・ジョン・D・アートマンの記録

新章

父が死んだ。

もうろくに戦える身じゃないのに、最後までずっと戦って死んだ。
都市の真ん中で開いた"門"を閉じるために百人余りの祓魔師エクソシストが集まった。そこにある景色は悪魔が、というより、地獄がそのまま来たかのようで

父は若い祓魔師を救って、庇って、生かして、逃がして、肩代わりして
死の間際どころか死んでなおも役目を果たそうと、出来ない体なりに出来ることを全て出し尽くして、死んだ

残り滓のような加護が、祝福が、棒切れのようになった父の破片を核に結界を象って、悪魔の行く手を阻んだ

"門"は閉じられた。


父の遺骸は聖遺物として故郷から遣わされた送者が回収して行った。

ヴァチカンにある父の墓は空だ。
溢れんばかりの花々に囲まれた重し
生前の交友は多かった(祓魔師の友人や知り合いは殆どいないので、この花は今まで関わった一般人から贈られたもの)

着慣れない背広は硬く、雨を吸ってじっとりと重く

人の為に祈り続けた父が、やっと人々に祈られた
満足しただろうか

俺達は満足しただろうか

私は満足するのだろうか


「もうとっくに」

悟ってるさ

缶ビールを開けて、父の墓にぶっかける

「っぱ、こうでなくちゃ」