RECORD

Eno.340 月待 よすがの記録

ねがいごと

人間は積み重ねて、共有して、そうして生きていくものだ。
他者から影響を受けて、還元して、同調しながらも個を育む。
それがどうしようもなく息苦しくて、そんな世界への当てつけのように言ってしまう。

「僕は、楽しくない神秘がないと生きていけない」

……みんなみんな、ただ諦めたように「そうか」と言う。
そんなこともあるだろう。お前はそうなのだろうと、飲み込みがたいものを咀嚼している時のような、あの、あの"間"。
それを感じるたびに、ずっとずっと死にたくなる。
また言ってしまった。仕方ないと自分に嘯いて、他者の気持ちを踏みにじって、自分を知ってほしい・・・・・・と思ってしまったと。

だからこそ"楽しい"ことは僕にとって前提なのだ。楽しければなんでもいい。楽しければ他人の反応なんて気にしなくて良い。
楽しければ生きていていい。楽しければ死なない理由になる。


自己実現。刷り込み効果。引き寄せの法則。偽薬効果。自己暗示。
思考を手繰り寄せれば結果を引き寄せる。
そうであると思えばそれが叶う、"おまじない"。
思いを馳せる願い事。貴方がそれをどう解釈して神秘に近づけようとしても、僕はそれを解明された神秘だと定義づけようとする。
だってそうだろう。神秘にそれを願ったとて、待つ間に自分が死んだら意味がない。
止まった時間を過ごして生も死も併せて過ごせるほど僕は大人じゃない。
ちゃんと生きている感触・・・・・・・が欲しいだけなんだ。




楽しく過ごせますように来年も生きていられますように
――ただ自分ひとりが生きるための傲慢な。

楽しく過ごせますように神秘に触れ続けていられますように
――掬われてしまうことが一番恐ろしいとばかりに。

楽しく過ごせますようにああもう理由なんて何でもいい
―― 一語一句違わず、三度同じことを綴った。


短冊に載せた願い。ふたりで飾った想い。舟に流した感情。ぜんぶ。

  






……あぁ、これ、自己実現なんかじゃない。



単なる■■強迫だ。






――……そう知覚してからは早かった。




――ならもういいよね?


窓に反射した自分・・から声がする。

大丈夫。君は三度願ったんだから、それは奇跡神秘足り得るものになるよ


自分だと理解してしまってからは、すぐだった。

偽薬効果でも、自己暗示でも、強迫観念でも何でもない。
 『三度願った流れ星』も、『三度目のドッペルゲンガー』もあるんだよ!


言葉をはさむことすらできない。

…………だからさ、会いにきてよ。願いを叶えてあげる


そうだね、それに従おう。

願いを叶えてくれるなら、もう少し僕だって生きやすくなるはずだろう。
もう少し。まだ。あとちょっと。やるべきことがあるんだから。