RECORD

Eno.38 穂叢 焔芽の記録

同胞

自分と同じような気質の人間を見付けた、と思って喜んだのは記憶に新しい。
僕ほど酷いやらかしをしたことはない、と言われて微妙な気分になったのも記憶に新しい。

別に世界で僕だけがこういう性質だと言うのなら、それはそういうものと割り切ったのだろう。
世界でもしたった1人であったなら、そのこと自体は受け入れたことだろう。

そもそも人間は、同じ人間を生み出さないように出来ている。
種の繁栄という観点において、異なる遺伝子の組み合わせを作るように出来ている。
だから同じような気質を持つとか、そういうのは全て偶然の産物の上に、更には出会えるかもどうかも確率だ。

そういうわけで、何か共有や共感できないような物事があるのは仕方ないことである。

それってつまり、遭遇する可能性があるってことなんだよな。

あの子の気質は、ほとんど僕のそれと同じだ。
ほとんど同じだった。
口から出てくる言葉が、どれも僕が言うような事ばかり出てくる。

なんだろうな。
そのことに気付いて、自分が他人とズレてることが結構どうでもよくなった。
ズレてようが気にせず、共有や共感の出来ることはそれを喜び、逆に異なる部分は違いを楽しめばいい。
今は共有が難しいものでも、いずれはそういう人が見つかる可能性があるだろう。

なんせ一番見つからないだろうと思ってた、他人をこれだけ知ろうと、同時に他人に知られたいと思う性質の子が居たのだから。
……この性質の人間が居るなら、他はいくらでもいるだろ。たぶん。

あの子は僕よりも小さいうちからよく出来た人間性で、僕のようなやらかし方はしていないっぽい。
でも本質は同じだ、知りたがりで、教わることも互いを知る行為だと思っている。
何かを、誰かを知るのが嬉しくて、その逆も同様であまり忌避がない。

その上でやらかしを経験していないから、僕のような人に対する臆病さを持たない。
誰にだって人懐っこく近付いて、人から反発されないちょうどいい加減で接していける子だ。

僕より小さい子だが、僕が見習うべき存在だろう。
ユキに言われた通り、僕は人を傷付けないために壁を作ってきた。
あの子には、リオンにはその壁がない。

それからもうひとつ。
……僕と似ているということは、僕と同じく恐れる感情が弱いという事だ。
「これはヤバい」と理性が警鐘を鳴らすまで、「まだ行ける」と思って突っ込んでしまうということ。

普通、知り合った人間には裏と距離を保つように言う。
けどあの子に関しては、むしろ正しい対処を教えた方が良いと判断して、そうユキに相談した。

出会って間もないといえ、あの子には死んでもらいたくない。
だから他の友人たちが居なくならないように裏から遠ざける、それと同じように知識を託さないと。

僕も、恩師の知恵に助けられている。
恩師は僕に対して、同じ判断をした。
であれば、僕がすべきもこうだ。