「…………」
席に戻って、コーヒーとアイスの境界をつつく。
「……俺が知らなかっただけで、表世界のこの世の中って結構、
裏の影響受けてるんだろうなって、再確認しました」
誰も居ない。
「センセにあったことはきっと特別な話じゃない。
神隠しとか、なんかそういう、不可解な現象は、
科学で説明のつかない話は、昔から沢山ある……」
誰も居ない。
「…………」
「…………怖い……」
「俺にとって裏は、暴力と理不尽の危険にずっと怯えるしかない、怖いところです。
だからずっと線を引きたくて、境界をはっきりさせたくて、
そうじゃないと、他人が、怖くて仕方ない。
いつそれが自分を脅かすか、恐ろしくて仕方ない」
誰も聞いちゃいない。
「他人を、信じようと、思ってるんです。
信じたいと思って、頑張ってるんです。
それは、この世界が、表世界が、秩序だってる事を信じているから。
主の手があることを信じてるから、まなざしてもらえてるから。
でも、もし、その境目がもう、なかったら」
「…………」
きゅ、と唇を閉ざして、ひとりで項垂れた。
誰にも聞こえやしないだろう。
エアコンの効いていない部屋の中、
アイスが溶けるのはいつもより早かった。
