RECORD
Eno.98 十八成 玄の記録







油断も隙も無かった。
残念がる彼と机を挟んで相対する。



















彼はそう言って一呼吸置き、笑顔を向けた。





途端にこれ以上、彼を責める気になれなくなった。
彼も日常を奪われた側の人間だった。
この時、いつか彼に言われた恨み言を思い出していた。
「今更じゃないか」。
「あのとき誰も守れなかったし、守ってくれなかったからこうしたんだ」、と。
よくない、けど。
彼は一番最初からこうするつもりだったのかもしれない。
それを止めるのは私の役目だけれど。
私はそれを、止められないかもしれない。
彼は私の事を信じていない。
私は彼の、ウンザリの一部である事を知っていた。
この日はこれで解散にした。
彼の目は私を見なかった。
蛇足・6

「というわけで、今回の検査も終了です。異常なし!」

「やった〜! じゃあもう帰れんすか!」

「いえ、帰しません。」

「今日という今日は質問に答えるまで出しません。いいですね」

「………………」

「帰るっす。じゃ」

「こら!! 影抜けて帰らない!!」
油断も隙も無かった。
残念がる彼と机を挟んで相対する。

「……こほん。じゃあ、まず一つ目。
貴方、旭さんと七未さんに何かしたでしょう」

「え、気付いてなかったの?」

イラッ……

「……え、ええ。今までは検査にすら引っかかりませんでした。
七未さんから訴えが無ければ気付かず仕舞いだったかも……」

「あ、めりいも気付いてたんだ。俺がやったって言わないでね」

「……それは何故?」

「だってアイツ、やめろって言うだろ。」

「次何言うつもりか分かんないけど、やめないよ。」

「第一悪い事してねぇから。ね」

「……本気でそう言っていますか?」

「貴方のしている事は……二人の未来を奪う行為です。
不死であろうと、不老であろうと、
このままでは彼らの時は止まったままで……」

「………………」

「…………? なんで? いいじゃん」

「怪我もしない、理不尽に命を奪われない、
ずっと今のままで暮らす事の何がいけないのよ?」

「手段というものがあるでしょう! 第一、貴方は……」

「俺様もそうだけど?」

「あのさ。それを聞いてどうすんだよ?
俺が止めるまで頭下げんの?
それとも解除する方法でも探す?」

「分かってないな……ほっといてくれない?」

「いや……言い方悪いな。ごめん。
もうそっとしといてよ、俺達のこと。
ウンザリなんだ、こういうの。」
彼はそう言って一呼吸置き、笑顔を向けた。

「ま、大丈夫」

「心配すんなよ。俺様がぜ〜んぶ上手くやるからさ!」

「…………」

「……………………」

途端にこれ以上、彼を責める気になれなくなった。
彼も日常を奪われた側の人間だった。
この時、いつか彼に言われた恨み言を思い出していた。
「今更じゃないか」。
「あのとき誰も守れなかったし、守ってくれなかったからこうしたんだ」、と。
よくない、けど。
彼は一番最初からこうするつもりだったのかもしれない。
それを止めるのは私の役目だけれど。
私はそれを、止められないかもしれない。
彼は私の事を信じていない。
私は彼の、ウンザリの一部である事を知っていた。
この日はこれで解散にした。
彼の目は私を見なかった。