RECORD
Eno.38 穂叢 焔芽の記録
僕と世界
世界というのは、自分を取り巻くものだ。
表だ裏だとかそういう話ではなく、自分の周りに何が在るかが世界だ。
少なくとも、今はその定義として考えよう。
世界はいつだって変動する。
新しく誰かと出会い、新しく誰かと仲良くなり
新しい何かを手に入れ、新しい何かを知る。
誰かが去り、誰かに嫌われ
何かを失い、何かを忘れる。
僕の知る、僕を取り巻く、僕の世界はいつだって変わる。変わり得る。
周囲の人間に嫌われて世界に家族と朱魚しかいなくなった時、流石に堪えた。
僕の世界から何かが損なわれることを、忌避する最初のきっかけだろう。
僕が裏の世界で仕事をして、知っている誰かが巻き込まれるのを防ぎたい
漠然とした活動理由の原点もここにあるんだろう。
それから網戸レンの死亡……実際には未遂だが、本当に死んだと一度でも思ったこと。
思い入れのある人間ですらないのに、簡単に人が喪われる事実が怖かった。
僕にとって、あれだけ怖いと思ったことは初めてだった。
正直言って他人、なのにあれだけ怖いと思った。
もし、自分の世界の中にいる誰かがそうなったら?
あまり考えたくなくて、意識するのをやめた。
何も無ければ、それ以上は深く考えずに済んだのかもしれない。
なのに、つい月曜日には先生が消えて
人って怖いとき、本当に手が震えるように出来ているんだって思った。
誰にも言わないから、ここにしか書かないけど
怖かった。
自分の知っている誰かが、容易く自分の世界から消えたことが怖かった。
尊敬する恩師が知らないうちに消えてしまったことが怖かった。
後輩たちがいる前で表に出すわけにいかないけど
もしかしたら、彼らは聡いからとっくにバレてたかもしれないけど
この恐怖をどこかへ押しやるのに、何か、どうにかしたかった。
どうにかして、紛らわすとして
それってどうやってやればいいのかを、誰か教えてほしい。
対処をひねり出す以外に、そのために頭を回す以外に、どうすれば良いのか分からない。
感情ってどう処理すれば良いんだっけ
感情を言葉にして、恐怖だと解明して、それだけじゃ何故か収まらない。
教えて欲しい、僕はどうすれば良いのか。
思えばシレルに攻撃が集中して倒れた時も、いつになく焦った覚えがある。
あれも恐らく怖かったんだ、シレルが僕の世界から消えることが。
あの時は、とにかく退路を切り拓くって、適切な対処をすることだけ考えられたから良かった。
とにかくどうすべきかで考える必要性のお陰で、必要以上に怖いって感じる暇もなかった。
先生と同じような状況だったらもっとボロボロだったと思う。
先生の場合は、そういうわけにいかなかったから。
とにかく1900という数字だけを頼りに、その時間に何かが起きて、どうにかするという以外に考えようもなかったから。
今、自分の手で、何かが出来るって状況じゃなかったから。
どうか僕が何もできない状況で、僕のもとから消えていかないでほしい。
何かが出来て、それが力不足だったなら、諦めくらいは付くと思うから。たぶん。
それで諦めが付くかは分からない
でも何もできなかったら、何かで来たんじゃないかって、思い続ける気がする。
それで言ったら、何かが出来てたとしても、もっとやれただろって自分を責めるのだろうか。
美兎もたまにふっと消えてしまうんじゃないかって思う時がある。
元気で明るく振る舞っている中で、ほんの少し影が見える時があるのが怖い。
蘇生の話と裏の研究室の状況から考えて、たぶん亡くなった両親の影を追っているのだろうと思う。
その危うさがあって、ある時に消えてしまわないかと、少し怖いと思う。
それからアサミも。
話をする機会が無ければ、そのまま怖いと思うことすらなかったのに。
話をして、事情を察してしまった以上、消えてしまうんじゃないかって頭から離れない。
勘違いであれば良いと思うのに、たぶんそうじゃない。
幻想的に、連れ去られることを望んでいる。
朱魚に、今なら本気で謝ることができそうだ。
朱魚がどうして、あれだけ焦って、怒りながら僕を連れ戻したのかが理解できる。
その感情に至るまで、理解ではなく、きちんと共感ができる。
僕の世界から誰かが損なわれることを、冷静に見ているなんて出来るわけがない。
先生はたぶん帰ってくる。僕らの行動如何で連れ戻すことができる。
シレルは僕が判断を間違ってしまっただけで、僕のせいでしかない。
美兎はそういう影が見えるだけで、本人もたぶん、助の居る今そちらへ積極的に足を踏み外してしまうってこともあんまりない、って思いたい。
アサミは……。アサミは、願いを叶えようとして、叶えて、消えてしまうのかな。
でも、人はエゴがあるから面白いのであって。
人は対等にあるべきで、対等であってほしくて。
誰かに何かを希うことはあっても、捻じ曲げることは嫌で。
当人がそう願う以上は、そのようになってほしい自分だっていて。
また明日、って言葉はおまじないだ。
縁の切れ目が今でないことを願って、明日も続いていることを願って言う言葉だ。
せめて次に会う時までは、まだ会えることを願って言う言葉だ。
また明日を永遠に繰り返して、世界から何も喪われなければいいのに。
まだ。まだ、スコーンの奢りまではこの世界に在ることを願う。
その次もどこか、たとえば夏休みに出かける予定を入れたら、その次まで世界に在り続けてくれないだろうか。
また明日って、いつまで繰り返せるんだろう。
期限切れは無いと信じていないと、どう押しやって、誤魔化せば良いのか分からない。
表だ裏だとかそういう話ではなく、自分の周りに何が在るかが世界だ。
少なくとも、今はその定義として考えよう。
世界はいつだって変動する。
新しく誰かと出会い、新しく誰かと仲良くなり
新しい何かを手に入れ、新しい何かを知る。
誰かが去り、誰かに嫌われ
何かを失い、何かを忘れる。
僕の知る、僕を取り巻く、僕の世界はいつだって変わる。変わり得る。
周囲の人間に嫌われて世界に家族と朱魚しかいなくなった時、流石に堪えた。
僕の世界から何かが損なわれることを、忌避する最初のきっかけだろう。
僕が裏の世界で仕事をして、知っている誰かが巻き込まれるのを防ぎたい
漠然とした活動理由の原点もここにあるんだろう。
それから網戸レンの死亡……実際には未遂だが、本当に死んだと一度でも思ったこと。
思い入れのある人間ですらないのに、簡単に人が喪われる事実が怖かった。
僕にとって、あれだけ怖いと思ったことは初めてだった。
正直言って他人、なのにあれだけ怖いと思った。
もし、自分の世界の中にいる誰かがそうなったら?
あまり考えたくなくて、意識するのをやめた。
何も無ければ、それ以上は深く考えずに済んだのかもしれない。
なのに、つい月曜日には先生が消えて
人って怖いとき、本当に手が震えるように出来ているんだって思った。
誰にも言わないから、ここにしか書かないけど
怖かった。
自分の知っている誰かが、容易く自分の世界から消えたことが怖かった。
尊敬する恩師が知らないうちに消えてしまったことが怖かった。
後輩たちがいる前で表に出すわけにいかないけど
もしかしたら、彼らは聡いからとっくにバレてたかもしれないけど
この恐怖をどこかへ押しやるのに、何か、どうにかしたかった。
どうにかして、紛らわすとして
それってどうやってやればいいのかを、誰か教えてほしい。
対処をひねり出す以外に、そのために頭を回す以外に、どうすれば良いのか分からない。
感情ってどう処理すれば良いんだっけ
感情を言葉にして、恐怖だと解明して、それだけじゃ何故か収まらない。
教えて欲しい、僕はどうすれば良いのか。
思えばシレルに攻撃が集中して倒れた時も、いつになく焦った覚えがある。
あれも恐らく怖かったんだ、シレルが僕の世界から消えることが。
あの時は、とにかく退路を切り拓くって、適切な対処をすることだけ考えられたから良かった。
とにかくどうすべきかで考える必要性のお陰で、必要以上に怖いって感じる暇もなかった。
先生と同じような状況だったらもっとボロボロだったと思う。
先生の場合は、そういうわけにいかなかったから。
とにかく1900という数字だけを頼りに、その時間に何かが起きて、どうにかするという以外に考えようもなかったから。
今、自分の手で、何かが出来るって状況じゃなかったから。
どうか僕が何もできない状況で、僕のもとから消えていかないでほしい。
何かが出来て、それが力不足だったなら、諦めくらいは付くと思うから。たぶん。
それで諦めが付くかは分からない
でも何もできなかったら、何かで来たんじゃないかって、思い続ける気がする。
それで言ったら、何かが出来てたとしても、もっとやれただろって自分を責めるのだろうか。
美兎もたまにふっと消えてしまうんじゃないかって思う時がある。
元気で明るく振る舞っている中で、ほんの少し影が見える時があるのが怖い。
蘇生の話と裏の研究室の状況から考えて、たぶん亡くなった両親の影を追っているのだろうと思う。
その危うさがあって、ある時に消えてしまわないかと、少し怖いと思う。
それからアサミも。
話をする機会が無ければ、そのまま怖いと思うことすらなかったのに。
話をして、事情を察してしまった以上、消えてしまうんじゃないかって頭から離れない。
勘違いであれば良いと思うのに、たぶんそうじゃない。
幻想的に、連れ去られることを望んでいる。
朱魚に、今なら本気で謝ることができそうだ。
朱魚がどうして、あれだけ焦って、怒りながら僕を連れ戻したのかが理解できる。
その感情に至るまで、理解ではなく、きちんと共感ができる。
僕の世界から誰かが損なわれることを、冷静に見ているなんて出来るわけがない。
先生はたぶん帰ってくる。僕らの行動如何で連れ戻すことができる。
シレルは僕が判断を間違ってしまっただけで、僕のせいでしかない。
美兎はそういう影が見えるだけで、本人もたぶん、助の居る今そちらへ積極的に足を踏み外してしまうってこともあんまりない、って思いたい。
アサミは……。アサミは、願いを叶えようとして、叶えて、消えてしまうのかな。
でも、人はエゴがあるから面白いのであって。
人は対等にあるべきで、対等であってほしくて。
誰かに何かを希うことはあっても、捻じ曲げることは嫌で。
当人がそう願う以上は、そのようになってほしい自分だっていて。
また明日、って言葉はおまじないだ。
縁の切れ目が今でないことを願って、明日も続いていることを願って言う言葉だ。
せめて次に会う時までは、まだ会えることを願って言う言葉だ。
また明日を永遠に繰り返して、世界から何も喪われなければいいのに。
まだ。まだ、スコーンの奢りまではこの世界に在ることを願う。
その次もどこか、たとえば夏休みに出かける予定を入れたら、その次まで世界に在り続けてくれないだろうか。
また明日って、いつまで繰り返せるんだろう。
期限切れは無いと信じていないと、どう押しやって、誤魔化せば良いのか分からない。