RECORD

Eno.712 茅鳴 ほみの記録

茅鳴直生の日誌 #11

ほみが俺に料理を教えようとしてくる。

「なんだか かもなく ふかもないね。
 もっと何もできないのかと 思ってたけど」


自炊ってのはコストパフォーマンスが悪い行為なんだよ。
めんどくさいと思ったらやめられる程度にこの世には食う物もある。
ここみたいな都会ならなおのことだ。
と説明してもほみは納得がいっていないようだった。
何を期待されてる……?まさか俺が漫画みたいな料理下手であることを……?

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ある日ほみがメイド服で帰ってきた。

「ウワーーーッ」

「ひどい ひとをばけものみたいに
 こんなにかわいいのに」

「お前、ご近所に見られてないよな!?」

「ただでさえ親子にも兄妹にも見えない
 男女が一つ屋根の下で一緒に住んでる
 って危うい関係なのにその格好はまずいって!!」

「あったんだ きゃっかんせい」


人を常識のないマッドな研究者みたいに思ってる?こいつ。
お前を家に入れるにあたって、
俺はコロニストが用意したよりもより隙のないカバーストーリーを作り上げ、
さらにはバイトもリモートの割合が多いところを探し、
極力外出しないことでほみと一緒のところを見られないようにしているというのに。
よりにもよってメイド服を着るな。クラシックでいい造形じゃねえか!

「もちろんだいじょうぶ おとなりのおばさんにも
 かわいいねって 言われましたよ」

「終わった」


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「おいしかったおでんにしました
 ほみはもう食べたので 先生はひとりでどうぞ」

「今真夏なんだけど……」


ほみがじっと見つめてくる。食べづらい。
観察しているのは俺の方なのに、ここ最近は特に、
ほみがよく俺の方を見ている、気がする。
表情が変わればまだ何か言いたいことがわかるんだが、
生憎こいつはいつもこのにへっとした笑顔だ。

お前は何がしたいんだ?
お前は何になりたいんだ?
お前は俺に何をさせたい?

そんな一言すら、訊くことができない。

「……ほみ」

「俺こんにゃく嫌い」

「あつ あつ あつ」