RECORD

Eno.220 笹杜 梨咲の記録

夏季講習

「それ、本当なの?」


「うん」



夏休みを数日後に控えた夜、久々に実家の食卓を囲んだ。
その時に、ついでに思い出した、という風を装って
話を切り出した。


「今のご時世で、高校生の夏季講習が無料なんてねえ」

母が箸を持ったままの手を顎に当てる。


「学連と提携してる塾だから
 年間授業料込みになってるんだって」





嘘だ。

本当は、バイト代と“機関”の依頼で受けた報酬を合わせて自分で申し込んだ。
銀行印でもない、認印程度なら普段からいつでも使える場所にある。




「学校が休みの間こそ、今までの復習と予習に集中できるから」


「ふうん。……梨咲、進学したいの?」


「…ん………。……まあ、選択肢としては…………」


「もし行きたいんだったら遠慮なく言ってくれていいのよ?」


「…うん、ありがと……。でも、まだ考え中だから……」





これも嘘。
本当は、是が非でも、授業料の安く済む国立の大学に行くつもり。
自分で貯めたお金で。





嘘に嘘を重ねて。
私は辿り着けるだろうか――夢の先へ。