RECORD

Eno.2018 東谷 桃弥の記録

追想①


親ガチャって言葉を借りるなら、当たりなんだと思う。
ただ、申し訳ねぇくらいに、子ガチャが失敗だっただけで。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「隼斗さん!」

その後ろ姿を見ただけで、気持ちが昂る。
振り返って目が合えば高揚する。

『おう、今日も元気だな』

笑顔を向けられたら、眩しくて。
…この人は、俺の憧れの人。
ここらを仕切る不良グループのボス、高瀬隼斗さん。

「また手合わせしてほしいっス!俺、強くなったんで!」
『ほんとかよ。お前、足は速ぇがパワーねぇからなぁ』

綺麗な金色の前髪をピンで上げてるから、表情のひとつひとつ、細かい視線の動きまでよく分かる。
俺も真似して前髪を上げてみたけど、隼斗さんみたいにはかっこよくならない。

喧嘩が強くて、声がよく通って、気前が良くて…容姿も綺麗。
男にも女にもすごくモテる。
アジトにもよく女の人を連れてくるけど…隼斗さんのついでみたいにベタベタされるから、ちょっと苦手…。


隼斗さんと出会ったのは13の時。
親と喧嘩して家を飛び出して、路地をうろついてたら…隼斗さんのグループのひとりと肩がぶつかって。
むしゃくしゃしてたから噛みついたら、まあコテンパンにされたんだけど…。
筋がいいって褒められて。
グループに来ないかって誘われて。

それからは、ずっと。
学校には行ったり行かなかったり。
でもそれでいい、今が楽しい。
隼斗さんや仲間と一緒にいることが、俺にとっては一番。
ここが俺の居場所なんだ。



……そう思ってたのに。