RECORD
Eno.220 笹杜 梨咲の記録
変わるということ
夏休み中だが、部室に来て夏季講習の課題をこなしている。
帰省中の自宅では、母の詮索が懸念され講習の勉強はやりづらい。
その代わり、自宅では夏休みの宿題をこなして過ごしている。
「ん……」
一つの教科が一段落つくと、頬杖をつき窓の外をぼんやり眺めた。
(“裏”の学科、どうしようかな……)
表の勉強は、おおむね順調。
問題は、裏の学科と機関からの依頼の兼ね合いに多くあった。
これまで、できるだけ前線に立たないよう、
率先して神秘を行使することを避けていた。
後方支援の学科を選び取ったのは、そういう面が大きい。
(でも……)
依頼は自身の予想以上に深化しているように感じる。
より強力な怪奇との対峙、複雑化する状況。
今でも力不足を感じる場面は多い。
早晩、足手まといになる可能性が高そうだ。
であれば、機関から抜ける?
『処置』を受けて裏世界のすべてを忘れ、高校入学までの生活に戻る?
……難しい。
すでに機関からの報酬は、重要な収入源の一つになっている。
この夏季講習すらも、機関の報酬があったからこそ申し込めたコースだ。
機関からの依頼がなくなるまで……せめて3年、できれば7年。
自分が『学生』をやり終えるまで、この収入があれば、と思う。
さらに言えば、裏世界を通じて知り合った人々との縁もなくなってしまう。
表で既に顔見知りの仲であっても
裏の記憶をなくせば、相手は怪訝に思うだろう。
状況を変えるのが難しいのであれば。
(…………私が変わらなきゃいけない)
(目的のために。……夢のために)
それが進化であっても、鈍化であっても。
前に進むために必要なことであるなら、
(私はやらなければ)
サークル棟の屋根が落とす薄蒼い影の中から、ガラス窓越しに
夏の眩い光が照らす校庭の樫の木が見えた。
帰省中の自宅では、母の詮索が懸念され講習の勉強はやりづらい。
その代わり、自宅では夏休みの宿題をこなして過ごしている。
「ん……」
一つの教科が一段落つくと、頬杖をつき窓の外をぼんやり眺めた。
(“裏”の学科、どうしようかな……)
表の勉強は、おおむね順調。
問題は、裏の学科と機関からの依頼の兼ね合いに多くあった。
これまで、できるだけ前線に立たないよう、
率先して神秘を行使することを避けていた。
後方支援の学科を選び取ったのは、そういう面が大きい。
(でも……)
依頼は自身の予想以上に深化しているように感じる。
より強力な怪奇との対峙、複雑化する状況。
今でも力不足を感じる場面は多い。
早晩、足手まといになる可能性が高そうだ。
であれば、機関から抜ける?
『処置』を受けて裏世界のすべてを忘れ、高校入学までの生活に戻る?
……難しい。
すでに機関からの報酬は、重要な収入源の一つになっている。
この夏季講習すらも、機関の報酬があったからこそ申し込めたコースだ。
機関からの依頼がなくなるまで……せめて3年、できれば7年。
自分が『学生』をやり終えるまで、この収入があれば、と思う。
さらに言えば、裏世界を通じて知り合った人々との縁もなくなってしまう。
表で既に顔見知りの仲であっても
裏の記憶をなくせば、相手は怪訝に思うだろう。
状況を変えるのが難しいのであれば。
(…………私が変わらなきゃいけない)
(目的のために。……夢のために)
それが進化であっても、鈍化であっても。
前に進むために必要なことであるなら、
(私はやらなければ)
サークル棟の屋根が落とす薄蒼い影の中から、ガラス窓越しに
夏の眩い光が照らす校庭の樫の木が見えた。