RECORD

Eno.1461 篠崎 駿の記録

音楽

岬の岩場に立って、目の前の海を見つめる。

波が岩にぶつかって白い泡を立て冷たい風がリストバンドの下の右手の傷跡をそっと撫でるような気がする。

カセットプレイヤーから流れる音楽が、波の音と混ざって、心をどこか遠くへ連れていく。

ポケットに手を突っ込んで、ゆっくり息を吐いた。

でも、目を閉じた瞬間、あの夜が頭に浮かんでくる。

2年前の浜辺で親友の佐藤 悠斗が死んだ、あの夜。

あの夜、砂浜は血と潮の匂いで重かった。月明かりの下、僕たちは怪異と戦っていた。

悠斗はいつも笑顔で、どんなピンチでも明るく振る舞う人だった。

隣で武器を振って、まるでこの戦いもいつもの冒険の続きみたいに立ち向かっていた。

でも、戦いは一瞬で変わった。怪異の数が多すぎた。

一匹を倒した瞬間、背後で悠斗の身体が崩れる音がした。

振り返ると、黒い爪が彼の胸を貫いていた。血が砂に染みて、月光に赤黒く光っていた。

僕は砂を蹴って駆け寄った。でも、遅かった。悠斗の身体は青い炎に包まれて、指の間から灰がサラサラとこぼれていった。

「俺は…まだ…生きて…」

そう言い残して、悠斗は夜風に溶けるように消えた。

僕の手には親友だったモノの灰だけが残り砂浜に残った血の跡と、遠くで響く波の音だけが、僕を現実に引き戻していた。

岬の風が冷たくて、思わず目を開ける。

あの時の無力が、この傷に刻み込まれているみたいだ。

悠斗はこんな暗い気持ち、嫌いだっただろうな。

胸の奥で、怒りと悲しみが混ざり合う。

頭の中では嫌になるほど聞いた声が一日中頭の中に響き思わずプレイヤーの音量を上げた。

彼がくれたこの音楽が嫌な声をかき消してくれる。

カセットプレイヤーのテープを交換して、ギターの軽い音が流れ始める。少しだけ、心が落ち着く。

僕はその音楽を聴きながら下水道へと戻った、誰も来ない暗いあの場所へ