RECORD

Eno.113 松林武の記録

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神林から、怒った理由を考えろ、なんて言われて
正直かなり嫌気が差した。

何に怒ってるか知りたかったから、ショックを受けたと言った事を深掘りしようとして、
裏世界の認識の相違があるからそのせいかと思えばまたキレられて、
そっちこそ理解しようとしてないだろうとこっちこそ怒りたかった。

そのくせこっちを心配するような素振りをしてくるから
それにもまたイラついていた。

はじめから、了承もしてないことを確定事項みたいに詰めてきて
こいつ俺のこと見下して支配しようとしてんのかと、
かなりの嫌悪感を抱いたのを覚えている。
気を付けるだかもうしないだか言った俺の言葉を信じてないんだなと思ったから、
それで溜飲を下げようと思った。
だからこそ、心情を考慮してやろうという気は更々起きなかった

俺のためを思って裏でも表と同じように接していた、とか言うのが理解出来なかった。
裏と表を区別したい俺に、何で表と同じように振る舞うことが俺のためになると思った?
あんなに神の気配をさせといて、普通に振る舞えるなんて、不気味でしかない。
そんなんで俺の隣に寄り添えてると思ってるのが笑えてくる。
裏を知った上で、裏の恐ろしさを受け入れて、その中で戦えてる時点でもう遠い。

俺の身に裏で何かあるのが怖いってことか?
そんなん俺はお前らが馴染んでる時点でずっと怖かった。
理由があると思って言わなかったのに、
どうしてそんな共通の恐怖で俺をそんなんで縛りつけようとするんだ。



だから、振った善意を受け入れられなかった事に腹立てたのかと思った。
だったらもうどうでもいい、と切り捨てようとして、
違うだろ、と悪意じみた自分の思考を堰き止める。




─────たとえ、たとえだ。
自分のことを理解する気の無い敵であったとしても、隣人として尊重すべきだろう。
聖書の言葉が過ぎって、思考を変えることにした。




神林が俺に向けた行動を俺のため・・・・のものだという前提で考えろ。
そもそも神林が身勝手なことをするやつじゃない事は知ってる、
自分の感情が通らないことに苛立つ様なことはしないと、分かってる。

ならその事を信じて考えろ・・・・・・・・・・・・・

裏で変わらぬ様に接してくれたのは、
裏でも居場所にしてくれと言ったのは、
裏は何もかも拒絶しないといけない訳じゃないことを教えたかったからじゃないか。

なのに俺がいつまでも裏を拒絶しようとしてることに、腹が立ったんじゃないか。
裏を恐れるまではいいが、何もかも拒絶しようとして
結果的に自分も他人も傷付けてる事に腹が立ったんじゃないか。
拒絶したがってる癖に順応しようとあれこれ理由をつけて裏に行こうとするのを、
危なっかしいと思えて仕方が無かったんじゃないか。



……なんて。
そうだったらほんと、
自分の浅はかさに辟易するな。



 

じくじく湧いてくる自責に、本当に嫌になる。
他者不信のフィルターが掛かってしまって言葉通りに受け入れられてなかったのだろうと
振り返って思いはする。分かってる。
だのに、水を得た魚のように湧いてくる自己嫌悪は本当に鬱陶しい。
早く寝よう。明日は聖書を読みながら、気持ちを整えよう。
自己嫌悪なんてするもんじゃない、
自分を愛してやらなきゃ他人を愛することなんて出来ないんだから。