RECORD

Eno.160 琉華院 いのりの記録

ある一日 -other side-

スマートフォンのアラームの音が部屋中に喧しく響く。
彼女はスマートフォンのアラームを何重にもかけている。しかもスヌーズ付きの。
彼女はあえていつもの起床時間より早い時間にアラームをかけている。
だから暫くは数分おきにアラームの音が部屋中に鳴り響く。
ちょっとうるさいけど、もう慣れた。……今日はいつもの起床時間よりも遅いお目覚めだったけど。

「遅刻遅刻~~~!ひーくん、行ってくるね~!」


彼女の朝の挨拶を聞き、いってらっしゃい、とヒレを動かして彼女の登校を見送る。



















「ただいま、ひーくん。」

「今日はね、色々あったんだよ。休み明けだったからかな、何だか人もいっぱいだったよ。」

「朝ご飯抜きだからお腹すいちゃったんだけど、ミキちゃんがあたしと皆の分のキャラメルをいっぱいくれて。」

「それをりり子ちゃんにあげて…… 凛音ちゃんに、怒られちゃったけど。でも流石に授業中はダメだよね。」



「あ、後ね後ね!本場みたいな本格的なたこ焼きを食べたんだよ!」

「たこ焼き、美味しかったなぁ。話題の店は混んでていけなかったけど、いつかは食べたいなぁ。」



金魚は少女のお話を聞く。今日あった出来事を。
これが彼の一日。なんてことはない、ある一日の話。


「……………。」



僕は小さな金魚鉢の中でひらひらとヒレを揺らす。
僕の世界は、この金魚鉢の中と、彼女の話す外の世界だけ。

いのりの話は楽しい。
いのりが笑っていると、僕も嬉しい。
いのりが悲しんでいたら、僕も悲しい。


彼女の幸せが、ずっとずっと続けばいいのに。