RECORD

Eno.1095 千花 律太の記録

話1

スマホの通知欄。SURFの通知が一件。
内容をぼんやりと眺めてから、適当な返事を入力する。

『もうすぐ帰るよ~!心配かけてごめん』

それからスタンプ。

別に悪さしてるわけじゃない。タバコを吸うとか、酒を飲むとか。
なにか悪いものとつるむとか。それ以上のもっともっと悪いこととか…。
そんなことはなくて、ただ、夜に出歩いているだけ。

初めて夜に出ていったのは四年生のころ。最初のうちは、すごく騒がれて、そして泣かれた。
俺を連れ戻したひとにも、とてもとても怒られた。
それからあったかいお茶と、身体を包む毛布を伴ってソファに座らされて。
親として改善してほしいところだとか、なにか学校で嫌なことがあったのかとか、いろんなことを聞かれた。

それで俺はこう答えた。
「猫を追いかけているうちに道に迷った」


繰り返した。
川辺でぼうっとしていた時は「蛍の光が見えたから」。山を少し登った時は「高いところに行きたかったから」。
商店街に寄って帰ってこなくなった時は……。

繰り返したのだ。
治らない俺の行動にふたりは随分悩んで、かといって、目立つ悪さをしているわけでもなし、ちゃんと帰ってくるから。
そのうち、ふたりに俺は「そういう子」なのだと納得されるようになった。連絡さえちゃんと取れるならいいよと言われた。
(いや、本当はずっと心配なままなんだろう。でも、俺のために無理やり納得してくれている。多分。)

好奇心が旺盛で、興味を引くものがあるとそちらにずうっと集中してしまう。
そういう気質の子なのだと。それならそれで、自分たちが気付けるように引き戻してやればいいと。

『兄』も、なにかあれば自分がすぐに連れ戻しにいってやると頷いた。



「ずっと良い家族ですよ、相変わらず。日奈子さんも、百合人さんも」

「それで、…まあ」

「問題ないです。今日も」