RECORD

Eno.476 綿打 束成の記録

置いてけぼりの、または置いてけぼりと手紙

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机の上に。 [Eno.476] 2025-06-24 12:06:39 No.2466207

封を切られた手紙が置かれている。
淡い黄色地に森のどうぶつ柄が散った、可愛らしい封筒。

傷や皺にならないように丁寧に開封されたそれと、
まだ開かれていない二つ折りで納められた便箋が、
ぽん、と机の上にほったらかしにされている。

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実家から連絡があって、私宛だっていう手紙が一枚。届いた。
とりあえず封を切って、それから意味もなく暫く放って。送り主は確認するまでもない。
こんなご時世に、わざわざ綺麗な封筒と便箋で手紙を書いて送るような顔は、ひとつしか思いつかない。


回想はじめ。

『だから、絶対大丈夫だって!
 将来的にはタバナちゃんとも、きっとうまくやれるから!』

ナルミ_綿打 鳴臣(わたうち なるおみ)

束成の姉。かわいいものとワクワクすることが好き。
これと決めたら譲らないガンコなところがある。


『家には滅多に帰らなくなる……って言っても、手紙は出すし。
 ああ、その……電波通らないからさ。キホンは手紙になっちゃうけど』

『近況はちゃ~んと報告する。それに、
 年末年始くらいは家にも帰るよ? ママのお雑煮食べたいもの!』

『だからさ、心配しなくっても大丈夫だよ。
 タバナちゃんにはピンと来なくっても、私には分かる』


『これがきっと運命的なめぐり合わせで、私は出会ったんだ』

『運命のひとに』



回想、おわり。


読む気のない文章だって頭に入れられるってのは、学生に必須のスキルだと思っていたけれど。
こうして向き合ってみれば分かる、私の中でそのスキルは……まだまだ未成熟だ。
元より興味を割けない文章は、驚くほど脳内で像を結ばない。

暫く上から下まで眺めるフリをして、ようやく。
「最近の生活は滞りない」とか、「不便さにも慣れてきた」とか、「あなたの顔がまた見たい」とか。
そういう当たり障りのないような言葉が並んでいるなあ、なんて感想に至った。

『私ね、なんていうのかな? カミサマの……恋人?』


『あは、なんか口に出すと冗談みたいだけど……
 でもね、そういうものになったんだ。きっとね』

『それで、その……ちょっとキンチョーするけどお……。
 タバナちゃんにも紹介するね! ……じゃじゃん!』


じゃじゃん、なんて声と共に指されたのは、ただ何にもない空間で。
それを何事かと眺める私を見て、姉もまた首を傾げた。

『いるよ? ここにほら、確かに』


そう言って、やっぱり何もない場所を嬉しそうに掴む姿を見て。
私はこれこそまさしく「冗談だろ」って思ったのだ。


「関係ないけど、私。
 気に入らないヤツは一発殴らないと気が済まないってたちなんだよな」

「目に見えない相手をぶん殴る方法ってさ、ある?」