RECORD

Eno.1716 白夜暁の記録

おしまい

 皆が畏れているのにどこか■■伝承に対して異常に「期待」をしている。
 友達を祟って欲しい、隣人を祟って欲しい、家族を祟って欲しい。
 こんな悪意のある、蠱毒のような場所があっていいのか。

 調査をしてみれば、全ての家は不平を言った。
 不便な田舎という土地柄への不満、近所付き合いの不満、都会に行く家族、友人、隣人への不満。
 ■■伝承から人が祟りを望むのは、噂は、全て人為的だった?
 都会から来た人間を侮蔑的に見る目、私に向けられる好奇と期待の目。
 気の所為ではない。
 噂はただただ「■■伝承」を好奇と悪意の目に晒すためにあって、祀られているものの本質は蔑ろにされている。
 本来は治水による安寧を願い、犠牲になった人々を想うために存在するべきではないのか。
 信仰も、人柱伝承も、全て悪意の中に包まれている。

 明日は社に行く。
 何か得るものがあるといいが。





 ある時、神様が生まれました。そのときは、まだ小さな子供でした。
 名付けられることすらなくて、仕方なく育てられていた子供でした。
 口減らしで放逐されたその子供は、死にました。
 お水で苦しんだ人々をさんざん見守ったあと、たすけてくださいと言われたので、仕方なく助けました。
 
 生まれたばかりの神様は、それから頑張りました。

 人を投げ込まれました。なので、水を治めました。
 最初はそれだけでした。

 だんだんと、あの神様は人を食べる悪い神様だと言われるようになりました。
 次第に、投げ込まれた人たちが自分たちを恨んでいるんだ、と疑心暗鬼の目を向けられるようになりました。
 疑心暗鬼はやがて責任転嫁となって、神様が悪い神様だから、人を食べるし、投げ込まれた人たちも恨むのだと言われるようになりました。
 
 神様は、自分が変わっていくのを感じながらも、頑張りました。
 
 祈られました。なので、呪いました。
 お願いされました。なので、祟りました。

 たくさんの人に、呪い、祟り、そうあれと願われました。
 だから、たくさん頑張りました!

 今は、もう、自分のせいで人が悪意を持つのか、悪意のせいで自分がねじ曲がっているのか、わかりません。

 頑張っていました! 頑張っていました! 頑張っていました!
 どれくらい頑張ればいいか、わからなくなりました!
 それでも、ここしか居場所がないから! みんなが期待しているから!
 頑張っています!
 どうか、どうか。
 私の名を、私だけの名を、呼んでくれ。
 私を、ここから、連れ出してくれ。