RECORD

Eno.211 箱守 シキの記録

報告

 
【内部報告書】

報告します。


監視対象経過観察 概要報告
1. 目的
本報告は、対象民間協力者に対し、北摩テクノポリス対神秘学術技能規則 第四条「技能の実践制限と報告義務」に抵触する恐れがある行動が認められたため、未然の違反を防止する目的で実施された限定的監視措置の概要を記録するものである。
2. 背景
令和7年4月9日、対象の行動報告の不整合により、未登録状態の神秘所持疑いが浮上。
これは規則第四条第1項および第2項に抵触する可能性があると判断され、事実関係の確認と違反未然防止のため、監視措置が決定された。
3. 監視実施の概要
• 期間:同年4月10日 ~
• 方法:北摩テクノポリス内での挙動の監視、神秘技能使用時の記録の抽出
4. 現時点の所見
監視期間中、重大な違反行為は確認されておらず、実践制限の枠を逸脱する動きは見られなかった。
ただし、対象の行動には独自判断による危険領域への接近や、報告義務を軽視する傾向が見られた点において、引き続き慎重な観察が望まれる。
5. 推奨対応
今後も継続的な観察が望ましく、対象に対しては定期的な聞き取り調査を実施し、該当疑惑に関する追加確認を行うことを推奨する。
報告者:神秘管理局監視課 担当官 _______


「カメラ、切ってもい~い?」
「でなきゃ話さないよ」




対象の要請により、映像記録を一時中断。
以降は音声記録のみ。

本件は警戒を解いたことを意味するものではございません。
これまでの動向、および貴方の背景を鑑み、今後も当局は必要に応じて貴方の行動を注視・記録してまいります。



「分かってるけど」
「だから、こんなにお行儀良く協力してるじゃんか」


発言時、椅子の背に軽くもたれ、脚を組み直す音が確認されている。
発語のテンポは過去記録に比して緩やかであり、余裕を演出している可能性あり。

勿論、協力的な態度も見えています。
ですが、それと“信用”は別の話です。



「あんなに表で大人しくしてるじゃん?
 もう、ず~っとお行儀良く」
「ちょっと非行少年やってるくらいでさ」



「……俺は、こんなに真面目に頑張ってるのにね~。
 自制の効かない奴らもいるの、ダルいって」
「馬鹿、アホ、滑稽。……ホント萎える」


「俺まで目ェ付けられるからやめてくんないかな」


最後の一文の直前、机を指先で連続して叩くような微かな音。
口調は冗談めいていたが、発話前に約5秒の間。

そのような態度は、抑圧か誘導か、いずれにしても意図的な印象を受けます。
ご自身の内面と切り離してお考えください。



「はあ…………」



貴方の日常を努めようとする振る舞いには感謝しています。



「……い~よ。俺、監視課の皆さんには感謝してるもん」
「こんなに俺を気にかけてくれて、どうもありがとう」


「少しは休んだら?」


この発言中、椅子を引き戻す音。姿勢を正した様子。
発言内容に対し声色に皮肉が乗っており、実質的な感謝の意図は認められない。

目を離したら何をしでかすか分かりません。


「俺が何をしようとしているかなんて、そんなの――」



短い沈黙。
補足:音声記録には無いが、担当官曰く机上の記録資料のうち一枚を指先で軽く持ち上げ、裏返したとのこと。
内容を読む様子は見られず、こちらに向ける形で手を止めた状態が約4秒続いた。


「……暴いてみれば?身体ごと」
「そしたら死ぬかもね」


発言直後、録音内に「ギィー」というやや長く大きめの音。椅子を引き摺ったものと推測。
沈黙中、呼吸音が一段深くなる。担当官の方に身を乗り出したと思われる。

……聞き取りの次は検査をお願いします。
以後、言動には慎重を期されますよう、強く申し添えておきます。


「はい」
「まあ、せいぜいしょっぴかれないようにするよ」



記録終了。