RECORD
Eno.133 氷野 はづきの記録
それからさっきのテーブルに二人で座る。お菓子をつまみながら、また大学のことや寮でのことを軽く伝えた。
何かあれば連絡はしてたから、改めて伝えることはそんなにない。
……学業に関しては。
『それにしても、こんなに周囲の話が聞けるとはな。ずっと殻に閉じこもってたってのに』
「うん、寮に入ったら楽しくて。ちょっと、考え方が変わってきた」
『いいことじゃねぇか。世界が広がったってのは』
「うん…、……あの、」
雰囲気を察したのか、叔父さんは口を閉じる。
「……せっかく寮に入ったし、すごく楽しいんだけど…。やっぱり、アパートのほうに部屋を借りたくて」
『その心は?』
「えっ。…えーっと…」
正直に言おうと思うと勇気がいる。
ちゃんと言葉は考えてきたはずなのに。
指先を意味もなく絡めてしまう。
『寮は楽しくて、誰かが作った飯があって、自分のことだけしてりゃ生活ができちまう。楽でいいじゃねぇか』
「そうなんだけど…」
『アパート暮らしは面倒だぞ〜。俺もこの家持つ前はそうだったが、飯なんてほぼコンビニだったし、掃除も適当だったからハエと友達になっちまってな、ははは!』
「さ、流石にそんなふうにはしないけど」
確かに、寮を出る理由なんてないんだ。
束都は学生へのサポートが充実しているし、加えてみんなの助けがあれば生活に困ることなんてない。
毎日会話が楽しくて、どんどん交友も広がって…。
でもまだ叔父さんには伝えていない。
寮を出たい理由の根底にあるものを。
なんて言おうかと、もう一度頭の中を整理していた時だった。
『…できたのか?』
「…なにが?」
『相手だよ』
「………」
ゆっくり頷いた。
叔父さんは顎を撫でながら、ため息をついた。
『数ヶ月で別人のようになっちまったな。
お前は一生恋愛のれの字もないと思ってた』
「…オレもそう思ってた…」
『……』
「でもそれだけじゃなくて、ちゃんといろんなこと、自分でできるようになりたいんだ。
家事とか、お金の管理も……今まで全部、叔父さんにやってもらってたから」
『ふぅん』
顎に手をやったまま、視線は斜め下。
何か考え込んでる…。
最悪の事態を想定しておこう。そうすれば、ショックも最小限に抑えられるし…。
時間がゆっくり流れていく。
葉月の空③
それからさっきのテーブルに二人で座る。お菓子をつまみながら、また大学のことや寮でのことを軽く伝えた。
何かあれば連絡はしてたから、改めて伝えることはそんなにない。
……学業に関しては。
『それにしても、こんなに周囲の話が聞けるとはな。ずっと殻に閉じこもってたってのに』
「うん、寮に入ったら楽しくて。ちょっと、考え方が変わってきた」
『いいことじゃねぇか。世界が広がったってのは』
「うん…、……あの、」
雰囲気を察したのか、叔父さんは口を閉じる。
「……せっかく寮に入ったし、すごく楽しいんだけど…。やっぱり、アパートのほうに部屋を借りたくて」
『その心は?』
「えっ。…えーっと…」
正直に言おうと思うと勇気がいる。
ちゃんと言葉は考えてきたはずなのに。
指先を意味もなく絡めてしまう。
『寮は楽しくて、誰かが作った飯があって、自分のことだけしてりゃ生活ができちまう。楽でいいじゃねぇか』
「そうなんだけど…」
『アパート暮らしは面倒だぞ〜。俺もこの家持つ前はそうだったが、飯なんてほぼコンビニだったし、掃除も適当だったからハエと友達になっちまってな、ははは!』
「さ、流石にそんなふうにはしないけど」
確かに、寮を出る理由なんてないんだ。
束都は学生へのサポートが充実しているし、加えてみんなの助けがあれば生活に困ることなんてない。
毎日会話が楽しくて、どんどん交友も広がって…。
でもまだ叔父さんには伝えていない。
寮を出たい理由の根底にあるものを。
なんて言おうかと、もう一度頭の中を整理していた時だった。
『…できたのか?』
「…なにが?」
『相手だよ』
「………」
ゆっくり頷いた。
叔父さんは顎を撫でながら、ため息をついた。
『数ヶ月で別人のようになっちまったな。
お前は一生恋愛のれの字もないと思ってた』
「…オレもそう思ってた…」
『……』
「でもそれだけじゃなくて、ちゃんといろんなこと、自分でできるようになりたいんだ。
家事とか、お金の管理も……今まで全部、叔父さんにやってもらってたから」
『ふぅん』
顎に手をやったまま、視線は斜め下。
何か考え込んでる…。
最悪の事態を想定しておこう。そうすれば、ショックも最小限に抑えられるし…。
時間がゆっくり流れていく。