RECORD

Eno.133 氷野 はづきの記録

葉月の空④


ようやく叔父さんは口を開いた。

『仕送りは今まで通りの額で変わらん。足りない分はバイトでもなんでもして、自分でなんとかしろ』
「え、えっと、それは」
『保証人が必要なら名前を貸してやる』
「!……ありがとう」

思わず声が上擦ってしまった。
茶化すように、ニヤリとした笑みを向けられる。

『ったく、俺みたいになるなよ?
こんなふうに家を持て余しちまったりしても困るからな』
「…うん、それは絶対にない」

その言葉を聞いて、叔父さんが妙に察しが良かった理由を思い出した。

叔父さんは結婚詐欺に遭ったんだ。
相手のことを本気で愛してて、たくさん尽くして、家まで建てたけどその途中で…。

それでも、オレのことを信じてくれる。
そのくらい、オレ自身が変わったってことなのかな。

「…叔父さん」
『ん?」

真っ直ぐに顔を見た。


「今まで、育ててくれてありがとう」


叔父さんは驚いたように目を見開いた。

今まで、改まって感謝なんて伝えたことなかった。
家族をみんな失ったオレを、本当の子供みたいに育ててくれて、大学にまで行かせてくれて。
ちゃんと言わないとってずっと思ってた。

返事がないな、なんて思っていたら、急に髪がぐちゃぐちゃになるほどオレの頭を撫で回してきた。
何するの、と視線を向けると、叔父さんは破顔していた。


『お前は本当に、笑うと母さんにそっくりだな』










———そっか。










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葉月の今日の、空模様。

どこまでも、いつまでも、晴れ。