RECORD

Eno.279 葦原奏翔の記録

29:神との邂逅及び取引【葦原奏翔】

茶屋で一息吐いていた所、ある男がやってきた
優希とのデートで行ったビアガーデン
彼処で料理に舌鼓を打っていた男だった
勿論、俺は彼の事など知らない
会話は疎か自己紹介すらしていないのでほぼほぼ初めましてと言っていい
その彼は天津狐夜と名乗り取引を持ちかけてきた
何故、ほぼほぼ初対面の者から取引など………とは思ったが彼は俺の事や裏世界を知っていた風だった事から色々調べてるだろうと思い裏世界の方で話を聞くことにした
天津曰く自分は商売繁盛や豊穣を司る神だそうだ
初対面でその様なカミングアウトされても………と、にわかに信じられなかったが
俺の寿命がおよそ還暦前後といった事実を知っていて、そのままで居た場合の結末をおよそ予見しているとの事
自分の寿命など俺すら最近発現した霊視(魂を視る目)によって知り
其れは誰にも明かさなかった事なのに天津の奴は其の事実を知っていた事からいやに信憑性が生まれてしまった
一切明かしてなければ裡に秘めたままの情報など先ず嗅ぎ付けようがない事だから

そんな天津が語る取引の内容は
"その寿命問題の解決策"
それと
"最近、俺の中で発現しそのまま発動しっぱなしな霊視(魂を視る目)の制御方法の確立"
それらの提供をする代わりに此方が信仰している大国主に恩を売りたいという事だった
家ぐるみで信仰している神の事すら明確に知っているという事を知り恐怖を感じたものだ
俺の事、寿命や霊視の事、葦原家と神の事
彼奴は何処でどの様に調べたのか
全部知っていたのだから

まあ…俺の家は確かに大国主と繋がりある家系とされているが俺も父も母も代々の教えを倣い信仰している様なものだから
まさかこの様に別の神が取引の為に寄ってくるかと驚いたな

まあ、其れ故に取引の返答に関しては拒否する理由はなかった
実際、其れだけ調べを付けているならば彼奴が神という信憑性としては0と言えなくなったし恩を売るくらいなら…とな
其れに今の現状と何時か来る未来を憂いていたのも事実だしな
後、霊視のオン・オフ切り替えは切実に習得したい
視界に入れた奴の魂の情報が否応なしに入ってくるから頭痛くなるんだよ、此れ

故に取引には応じた
後は取引成立の証である狐石のネックレスで彼奴を呼び出しながら現状を変えていくつもりだ

「しかしまあ、このネックレス………本当に神聖さが感じられるな」


恐らく自分の神力の一部を込めたりしたのだろうが下手な悪霊とか寄せ付けさせないくらいにはあるんじゃないか…?
真名は神秘の解明だのとデリケートな部分に触れてしまうだろうから聞かなかったけれどひょっとしたらマジで神なのかもしれんな…天津という男は
取り敢えずお守りも兼ねて持っておくとする
何分、魂が視れる他にも霊的な存在も見れるものだから下手に悪しき霊とかに勘付かれたら……とか嫌すぎるしな



【葦原奏翔】