RECORD

Eno.232 月影誠の記録

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動物園や水族館は苦手意識が強い。
どちらの方がマシか、と言われるとまだ水族館だろうか。

動物園も水族館も、どちらも気配獲物の数が多くて落ち着かない。
動物園の方がまだ1体の大きさが大きい分、気配の数は少なくて狩猟本能的にはマシ、ではある。

けれど、俺には今の神秘とは別に、『本来の神秘』がある。
といっても、結局これは中途半端に神秘として顕現しただけであって、
1つの神秘として昇華した、とはとても言い難いものなのだけれども。


―― クロと『契約』を結び、今の神秘を得たのは10歳の頃。
説明が面倒だから、いつもこのときを『神秘が発現した』と言っている。
クロと正式に相棒になったのは8歳のとき。出会ったのは5歳のとき。

誰も気が付かなかったけれど、客観的にこれらを考えると不可思議なことがある。
もしも契約からクロの言葉を分かるのだと仮定すれば、だ。

どうして正式に相棒になることができた?
相手は獣の言葉しか話さず、対話が成立しないのに?



「一方的に相棒を押し付けた、という考え方が取れるかもしれないけど」


「最初は何となくだったのが、だんだん分かるようになっていった」


「今では裏でははっきりと。表でも何となくは分かるようになった」



「―― 獣の言葉が分かる。
 それが、俺が中途半端に目覚めた『本来の神秘』」





神秘局の人やクロは、
「クロと契約を結んだことにより、本来の神秘の発現は進行をやめ、
 そのままの状態で自身に残った状態」だと推測をした。
真偽は正直分からない。なんせ、この力に関してはこれ以上の変化は何も起きていない。

クロは「ここまで簡単に何度も裏世界に迷い込める人間の神秘がこの程度のはずがない」と
首を傾げていた。
何にせよ。科学優位になる表でもある程度、分かるのだ。

獣が、何を欲求しているのか。



「だから、動物園は苦手なんだ。
 大半は特に飼育環境に不満を持っていないんだけど。
 小学校の頃の遠足で、動物園に行ったときにね」


「母親から引き離されて間もないライオンの子が、
 泣き叫んでいるのが聞こえてさ」




「……あ、動物園側が悪いことしてるんじゃないんだよ。
 そもそも2、3歳でオスライオンの子供は群れを追い出される。
 それに準じて親離れさせるんだよ」


「ただ、それでもやっぱり。
 『理解』すると、きついものがあるんだよね」