RECORD

Eno.166 結祈伽羅の記録

追求

今日訪れた客はニコリともしない奴だ。
まいったね、空気が非常に悪い。
こういう感じ苦手だなぁ〜……と、そんな事を思いながら目の前のお茶に手をつける。

「あ、美味しい。
 貰い物の茶葉だけど、なかなかです。
 そちらも冷めないうちにドウゾ」

……瞬きもしないか、やりづらい事で。

「同志結祈。
 何故黙っているのだ」

「……いや、僕はさっきから喋り倒していますよ?一人で」

「地下道での報告がされていない」

あーあ、面倒くさいやつだなこれ……
どれの話だ?

「しておりますよ〜?
 怪奇が現れた件数も事件もそりゃあくまなく……」

「伏戸教を探る者の報告を受けていない」

……
…………ああ、ソレか。

「学生の戯れでしょう?
何より彼の目的はウチの従姉妹みたいですし、調査なんてのは仲良くするキッカケにしたに過ぎない。
そんな事まで報告したくないなぁ〜ただの青春に野暮な……
え?まさか同志閂?
貴方、メロウなお話がしたい?あらまぁ?」

閂 陣内……伏戸信仰の同志のひとり。
表の信者などもう数少なく、こいつはアザーサイドの伏戸信仰の人間だ。

煽ってみれば眉をぴくりと持ちあげた。
あ、わりと扱いやすい奴かもだ?

「入手した書籍の内に真相に近づく物があったと聞く。よもや同志結祈はそちらは把握しておられなかったか」

……なんだ来る前に調べ倒してるじゃないか。

「把握してますとも?
 最近は流行りですし過剰反応ってものです……騒げばただの陰謀論だ」

火のない所に煙は立たない。
そう、こちらが動かなければ手掛かり等ありはしないものを。
わざわざ煙を立てて存在を示すとは愚かしい。

「学生を侮るな同志結祈」

「貴方こそ学生を侮るな、同志閂。
我ら以上に彼らのネットワークは恐ろしいぞ?
また現代において神秘を凌駕する科学力……カレント所属を侮りすぎかと」

「……何がいいたい?」

「つけられていなければ良いですね?
……と、そう言っていますよ」

あーあ、面白い顔しちゃって。
どうにもアザーサイド出身の同志は気配や妖気や何やらで警戒をしたがる傾向がある。
情報戦をまともにやれる程僕らは長けていないと自覚すべきだ。
少なくとも鞍馬北兎はドローンをよく扱う。
それくらいはこの人も理解してただろうに。

…………。

まー、そこまで気が回る子で無ければ良いんだけど!ね!
夏休みに浮かれて忘れていてくれたなら万々歳だ。

……どうにも動きに外連味があり過ぎて読めないんだよね。
結局あの子はどう読んでいて何がしたい?
質問の機会を与えたのに踏み込んで来なかったのは僕へ信用度の問題か?

まぁ、どうするかなー?
僕らも悪の秘密結社ってワケじゃない。
こちらの話をしても良いんだけどね……

……後は結局聞き出せなかった夜呼と彼の間の話がどうなっているのか、それ次第か。

「……同志結祈、私はどうすれば?」

あ、まだ居たか。

「とりあえずお引き取りを。
それから余計な事はせず僕に任せていただきたい。宜しいですね?同志」

にっこり笑って追い返す。
二度とくるな。あとで塩をまこう。

あーあ、ホントに面倒くさいな。
彼には……いや夜呼には大人しくしておいて貰いたい。

組織に夜呼の事がバレたら彼女を引き渡すしかなくなる。
なんだかんだ理由をつけて少なくとも雪割荘という場所から出されてしまうだろう。

……それだけは阻止しないと行けない。
ここが一番彼女を護れる砦なのだから。