RECORD

Eno.232 月影誠の記録

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―― 情操教育に失敗している
その自覚はある。
感受性が低くて道徳心が欠けている。
好き嫌いが殆どなく、尖って好きというものがない。
『月影誠』という人間は、全体的に平坦な人間だ。

はっきりと好きだと言えることは、生を殺すことと命を懸けた戦闘。
痛みを感じれば生きていると実感するし、
一歩間違えれば死ぬ緊迫感はたまらない快楽だ。
そうして踏みにじる命の、なんと美しいこと。
ぶちまけられる赤は、どんな高級な赤い絵の具よりも鮮やかだ。

見た目に関して、『何でもいい』はだめらしい。
どんな姿や恰好をしていても、その人が見せる姿の1つ1つが意味のあるもの。
髪が長くても、短くても、着飾っていても、飾っていなくても、
爪を伸ばしていても、髪飾りをつけていても、結っていても、ピアスを付けていても。
全部、その人が『似合う』『好き』だと思ってやっている恰好で。
それは何であっても、その人の思い入れが形に現れているから可愛いのだと。

……それでは、だめらしい。


「有名人を見ても大概同じに見える。
 誰がいいとか、どういった格好がいいとか、そんなものなくて」


「……これも、変えるべき部分なんだろうな」



俺のこの考え方は、どうやら好きな人を傷つけてしまうらしいから。
全部掻っ捌いて、赤をぶちまけさせてやれば。
どんな人でも美しくなるよ、と口にすれば皆引くんだろうな。




関わってこなくて楽になったと思ったのに。
優しくない自分をこれ以上晒さなくていいと思ったのに。
嫌い、で思いとどまれていたのに。

[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-07 21:50:04 No.5189339

>>5189278
「それにあの時聞いたんだ、あの君の傍にいたわんちゃんから君の過去を…だから余計に謝らなきゃって…」

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[北摩湖][湖畔]
[Eno.232] 2025-08-07 21:52:10 No.5189400

>>5189339
「あぁ……」

そういえば話した、って言ってたな。
俺が父親を殺しかけたって話。

「実の親を殺しかけたこと。ずっと後悔しているんですよ。
 ……正しくは後悔よりも、恐怖ですけれど」

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[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-07 21:55:04 No.5189496

>>5189400
「なんだか…分かるな、僕もそういう経験あるから…余計に…」

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この人は人の話を聞かない。
人の忠告もそもそも意味がなかったのだけれども、人の事情も、何も聞きやしない。
そのくせに分かったように同情を示してくる。
俺と同じなわけがないだろうに。

[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-07 22:00:19 No.5189635

>>5189603
「親じゃなくて…同級生をね…それも一人、二人じゃない結構な人を…」

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[北摩湖][湖畔]
[Eno.232] 2025-08-07 22:03:11 No.5189777

>>5189635
「ふぅん……」

自分の周りの人は、どうにも人を手にかけがちだな。
なんて、ぼんやりと考えて。

「楽しかったですか?」

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[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-07 22:07:57 No.5189932

>>5189777
「楽しい訳ないじゃないか…化け物になったとはいえいつも一緒に過ごして来た人たちを殺すなんてさ…」

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―― ほら。やっぱり分からないじゃないか。
『楽しい訳がない』って、自分で言ったじゃないか。
きっと同じ立場だったら、俺は化け物になった友人を楽しんで一人残さず殺しただろう。

そのくらい剥離があるくせに、
これは軽々しく『分かる』といった言葉を使いやがる。



同じ加虐欲を持った人だと思っていた。
加虐欲に振り回されて、精神を蝕まれている人だと思った。

……覚えている。
神秘に目覚めて、生物を殺すことに高揚感を覚えて。
それが本当に気持ちが悪くて、嫌悪感を抱くのに興奮と快感が支配していって。
今はもう、反対側に反り返した赤い甲殻類の感触を手にしても、負の感情は湧いてこない。
すっかり毒されてしまった俺と違って、まだあの人は引き返せると思った。

だというのに、裏に拘っていて。
裏に行かなくとも、救えるものは多いはずなのに。
分からなかった。だから踏み込んだ。



踏み込むべきじゃ、なかった。
知っていたはずなのに。踏み込んで、『理解』しようとすれば。
手痛い仕打ちが返ってくると。知っていたのに。




[北摩湖][湖畔]
[Eno.232] 2025-08-08 06:51:19 No.5201013

>>5200996
「…………」

眉間に皺を寄せて、再びため息をついた。
科学優位の表世界で神秘に毒されるのであれば、
それはもう神秘管理局に駆け込むべきだと思うのだが。
これは、それをしない。
それをしないどころか、自分に手をかけさせようとした。


「俺は基本的に」
「自他共に、命を粗末にする奴が嫌いです」

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[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-08 06:56:28 No.5201046

>>5201013
「分かってるさ…あの時の僕は、はっきり言ってイカれてた、誰かを殺したいって気持ちと殺してでもいいから誰か止めてくれないかって…ずっと考えてた」

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[北摩湖][湖畔]
[Eno.232] 2025-08-08 07:00:52 No.5201063

>>5201046
「分かっていない。何一つ分かっていない」

彼なりのSOSだったことは理解している。
殺してでも止めて欲しいと。
それだけだったら、まだここまで腹は立てなかった。

「あなた俺に救急車を呼ばせましたよね?
 俺に助けさせましたよね?

 その上で俺に殺させようとした。
 それがどういうことか、何一つ分かっていない!


怒号が響く。
良かった、ここに俺たちの他に誰も居なくて。

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[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-08 07:12:01 No.5201106

>>5201063
「あの時の僕は、その出来事の事は完全に消えかかってたんだ…必死に止めたけど、止まらなくて…だから君に止めてもらおうと…でも、あの時、君が助けてくれたのは感謝してるんだ…」

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救急車を呼んでほしい、と頼まれたことがある。
死にかけの人間は一番加虐欲が駆り立てられる。
同時に、自分が手にかけて床に転がった父の姿を幻視して。

煮えたぎる本能を無理やり抑え込みながら、このを助けた。
その何一つ知らない。なんなら、この人は助けられて当然だと思っていた。
快調になって顔を合わせたとき、何事もなかったように話しかけてきた。
俺がどんな思いで踏みとどまったかを。何も知らない。


そして、その上で。
その上で、この人は俺に殺されようとした。
人を傷つけたくないと、言ったのに。
この人は何も聞いちゃいなかった。
おまけに一度助けた人間を手にかけろと言った。
どれだけの思いであのとき手を差し伸べたかを、知らないから。

声を荒げても、訴えても、あれは自分のことしか見えていない!
謝罪も反省もなく、ただ言い訳を並べて慰めを待っている!



―― 結局この人は、自分の話を聞いてくれて、自分のことを慰めてくれる、
 そんな都合のいい人間が欲しかったんだ。



[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-08 08:25:21 No.5201557

>>5201544
「それじゃあ…君の話もしてくれよ…僕はまだ君の事をまだ詳しく知らない僕は君の事をもっと知りたいんだ、君が僕がどうなろうと関係ないって考えであっても僕は君の事を知りたい、分かりたい、君の事を…」

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[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-08 08:36:11 No.5201587

>>5201568
「いや、僕は君の事が本当に知りたいんだ、今まで君が僕の話を聞いていた分今度は僕が君の話を聞く番だ、だからなんでも良い君の事を話してくれ、頼む」

男は少年に向けて頭を下げた、この位で少年が話してくれるとは思わないけれどそれでも男が出来る精一杯の願いだった

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[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-08 08:44:20 No.5201630

>>5201600
「確かに君にメリットは無いけど…それでも聞かせてくれ、本当に知りたいんだ君の事」

男はただひたすらに頭を下げている

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[北摩湖][湖畔]
駿 [Eno.1461] 2025-08-08 08:51:51 No.5201704

>>5201668
「確かに都合は良すぎるし、君にとっては苦痛だでもそれでも僕は君の事が知りたいんだ、君に話すばかりだったからこそ君の話を聞きたいんだ」

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あまりにも、理不尽に詰め寄ってくるから。
結局「話をしない」と言っているのに「話を聞いてくれない」ものだから。
俺に苦痛とデメリットしかないと理解しながらも、押し通そうとするものだから。


[北摩湖][円月岬]
[Eno.232] 2025-08-08 19:14:28 No.5214830

>>5214716
「…………はっ、なぁんだ。
 折角話題をすり替えたのに。
 俺が話していないこと、バレたか


とはいえ、ここは裏世界。
つまり。

「クロ。帰るよ

神秘の行使が行える。
身軽な動きで狼に乗り、走れの号令を出す。

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一番嫌いな人のやり方を真似した。





―― もうこの人のことは、日記には書かないだろう。
書く気もない。どうでもいい。



「―― 無理やり、好きになるなら何がいいだろう」


「できるだけ無難で、大変じゃなくって、普通のことが、きっといい」


「……それって、なんだろうなぁ」