RECORD

Eno.480 日織 華憐の記録

月相

理解できない他人と、違う世界を生きていた過去の自分。
その間に一体どれほど差があるだろう。

時間が経つほどに記憶は色褪せる。
かつて見ていたはずのものも、思いも、理解できないものに成っていく。

自分の記憶のはずなのに、映画でも見ているようにどこか遠い。
あの日から日織 華憐は一番身近な他人になった。

足りない感覚モノは知識で繕った。
見えない色も知っている、伝わらない感触も、不鮮明な味も、知っている。

欠けた自分モノは立場で補強した。
国際貴女学院高等部1年、神秘管理局の協力者、同級生、同僚、友人、家族、先輩、後輩、何者でもない自分。

ふわふわと覚束ないものを地面に縫い付けるように、適した形に規定する。
そうすれば間違うことはないだろうと、いつからだろうか、自然とそう振舞うようになった。

繕い、補強し、確かにあったはずの光を写し取ろうとして。
■は今日も、日織 華憐でいられているだろうか。