RECORD

Eno.600 御子柴 銀次&ベコ丸の記録

この青い空の下で(後)





何やら生徒たちが廊下の窓際に集まっている。
方向的に校庭かな、「かわいー!」とか「犬だ」とか声が聞こえる。
迷い犬かな?と自分も興味を引かれて窓の外を見た。

白くて、ふわふわ小さいポメラニアン?が生徒や先生に追いかけられている。
近所の子かな、うちのベコ丸に似てるななんて思ってたら見慣れた赤いリボンが見え…






ベコじゃん!!!





考えるより先に体が動いていた。
持っていた教科書やノートを友人に押し付けて窓から飛び降りる。
「2階だぞ!?」とか驚きと共に背後から自分を呼ぶ声が降りかかったがもう後の祭だった。
やべっここ表だ。






木を蹴り壁を蹴り着地の衝撃を少しでも殺す。
硬いコンクリートを強く踏みつけ、そのまま校庭…逃げ回っている犬を迎えに行くように走る。
部活にも入らず羅生門で訓練しててよかったなんて思える日がくるなんて。他の生徒や先生すらも追い抜いてベコ丸を呼ぶ。

半ばパニックを起こしていたかもしれないけれど、俺の声に気づくとすぐにUターンしてきた。
胸に飛び込んできたときの衝撃はほぼ交通事故だったけど。


周りで拍手や歓声が上がっていた気がするけど、ベコ丸をなだめるのに必死であんまり覚えていない。
高校生活が始まってから、ある意味この事件は周りと打ち解けるいい機会だったのだと今は思う。





どうして探すのか、本当は気に食わないから。
知らないところに行ってるのが嫌だ。
知らない話をされるのが嫌だ。
女々しいだのみみっちいだの好きなように言えばいい。嫌なものは嫌なんだ。


けど、実際に追いかけた結果がこれで。
ああ本当に、この青い空の下でわかった。
いつも自分を見ては悲鳴を上げて逃げ回っていた人間に追いかけられて逃げるしかできない。
この世界では自分は弱者なのだと。
裏世界でこいつを守っていたように、表では自分はこいつに守られる方なんだ。


変なの。カッコ悪い。


こんな感情も初めてで、まるで生きてるみたい。
生を象徴するのが心臓ならば、この犬にそんなものはないのに。







尻尾を丸めて制服に爪を立てて、迎えの鳥がくるまでずっと銀次から離れなかった。
人間どもは可愛いとか触らせてとか沢山言ってた気がする。覚えてないけど。
後から聞いた話、学校って言うのは賢くなって人脈を作るところらしい。なるほど、強くなる場所なんだな。
それからなんか、ぶかつのすけっと?に誘われることがおおくなったとか
ベコ目当ての女どもが声かけてくるようになったらしい。
前言撤回。へんなところだな、学校って。




その後べしょべしょになっていた路二が学校に迎えに来たが、犬が凄い拒否を見せていたらしい。