RECORD
Eno.232 月影誠の記録
8/12(修正版)
誕生日にはいい思い出がない。
小学生になるまでは兄貴のようになれと学術本だの辞書だの、
そういった勉強用の書物を買い与えた。
まだマシだった頃の話だ。
父親に危害を加えるまでは、
とにかく兄と比べる言葉を浴びせられる日だった。
「出来損ない」「生まれなければ良かった」「もっと賢い子が欲しかった」
「誕生日くらい自分の出来の悪さを顧みれば?」
「お兄ちゃんのようにもっと勉強する子だったらよかったのに」
そう言いながら、より難しい書物やワークを買い与えた。
夏休みだから、学校を言い訳に家を出ることもできなかった。
監視が強すぎて、裏世界に逃げることもできなかった。
俺の誕生日にわざわざ有給を取ってきた父親は、
「俺がどれだけ出来が悪いか反省する日」だと言って、
俺を朝から晩まで家から出さず、深夜まで勉強を強要した。
危害を加えてからは、どこか怯えた様子のまま否定の言葉を並べた。
やり過ぎたら殺されるのだと思ったのか。
危害を加える前ほど酷いことはされなかったし、しつこくもなかった。
高校生になって、初めて誕生日を迎えて。
親元から離れたから、大丈夫だと思っていた。
実際は、より酷かった。
酷い自己否定が蝕んで。両親の血が流れていることを思い知って。
誰もいない部屋で、自分が生きていることを許せなくなって。
あんな親の子などいない方がいい。ロクな子じゃない。
何で俺は生きている。どうして、息をしている。
―― 死ねば、あんなカス共が残した血の片割れを絶やすことができるのに。
……それから。
振り払うために裏世界に行って、倒れるまでカランビットを振るっていた、らしい。
らしいというのは、そのときのことをあまり覚えていないから。
ただ、目が覚めたときのクロの心配そうな顔を、今でも覚えている。
―― ……本当は。
ここを去る前に。生まれてきたことを、肯定されたかったのだな、と。
別れて、独りになってから。
思い知った。
小学生になるまでは兄貴のようになれと学術本だの辞書だの、
そういった勉強用の書物を買い与えた。
まだマシだった頃の話だ。
父親に危害を加えるまでは、
とにかく兄と比べる言葉を浴びせられる日だった。
「出来損ない」「生まれなければ良かった」「もっと賢い子が欲しかった」
「誕生日くらい自分の出来の悪さを顧みれば?」
「お兄ちゃんのようにもっと勉強する子だったらよかったのに」
そう言いながら、より難しい書物やワークを買い与えた。
夏休みだから、学校を言い訳に家を出ることもできなかった。
監視が強すぎて、裏世界に逃げることもできなかった。
俺の誕生日にわざわざ有給を取ってきた父親は、
「俺がどれだけ出来が悪いか反省する日」だと言って、
俺を朝から晩まで家から出さず、深夜まで勉強を強要した。
危害を加えてからは、どこか怯えた様子のまま否定の言葉を並べた。
やり過ぎたら殺されるのだと思ったのか。
危害を加える前ほど酷いことはされなかったし、しつこくもなかった。
高校生になって、初めて誕生日を迎えて。
親元から離れたから、大丈夫だと思っていた。
実際は、より酷かった。
酷い自己否定が蝕んで。両親の血が流れていることを思い知って。
誰もいない部屋で、自分が生きていることを許せなくなって。
あんな親の子などいない方がいい。ロクな子じゃない。
何で俺は生きている。どうして、息をしている。
―― 死ねば、あんなカス共が残した血の片割れを絶やすことができるのに。
……それから。
振り払うために裏世界に行って、倒れるまでカランビットを振るっていた、らしい。
らしいというのは、そのときのことをあまり覚えていないから。
ただ、目が覚めたときのクロの心配そうな顔を、今でも覚えている。
―― ……本当は。
ここを去る前に。生まれてきたことを、肯定されたかったのだな、と。
別れて、独りになってから。
思い知った。