RECORD

Eno.559 赫岬理恵子/理恵奈/理恵美の記録

赤い靴の群れ、もう一つの『世界』

報告者:アザーコロニスト北部担当 神代悠一

リエコが「ゲームに興味があるの」と言ったのは、表世界の生活にもある程度慣れてきた頃のことだった。

「サークルで見たの。沢山の人がテレビを囲んでゲームをしていたわ。」



私は少し考え、携帯型ゲーム機と、とある有名な村づくりゲーム──『どうぶつの村』を彼女に渡した。『1人』で出来る。穏やかで、暴力性がないのも良かった。

三つの身体は私の目の前でゲーム機を囲むように集まり、理恵奈が本体を持ち、理恵子が操作説明書を開き、李恵美が首を傾げて画面を覗き込んだ。

「これは──ボタン?」


「木が揺れた……でも、何も落ちないのね」


「お金がなくて、買えないわ」



下手だった。

メニューを開けず、スコップを地面に刺しっぱなしで立ち尽くし、果物の木を揺すっても地面に落ちた果物を拾い損ねる。思ったよりもうまく動けないことに、彼女たち──いや、彼女は特に焦る様子もなく、ただ淡々と、真剣に観察と実行を繰り返していた。

「すごい。この中に、小さな世界があるのね」

理恵子が静かに呟いた。

「これは、誰かと住むための村?」

「そうだな。誰かが来るかもしれないし、来ないかもしれない」

私はそう答えるしかなかった。どこかで、それがこの家と似ている気もした。

『リエコ』は、下手なまましばらくゲームを続けていた。次第にコントローラーを持つ手つきがぎこちなくなくなり、代わる代わる理恵奈から理恵子、李恵美へと操作が移っていく。

私はそれを黙って見ていた。仮想の村で不器用に暮らそうとする彼女を。

まるで、現実のこの場所に少しずつ慣れようとしているかのように。