RECORD

Eno.102 不明門通 辰巳の記録

【日記02】従兄弟の話




何かもっと方法あったやろ、とは思わんでもない。
せやけど、後悔が先に立ってくれないように。
後の祭りってのは、時機を逸す前には捉えられへんようにできとる。
人生の妙やな。



「残念な事に、俺がしてやれんのはせいぜい後始末だけ。
 先んじて手を打ってやることができひん」


「後に悔いるから後悔って書く。
 ま、一応書道家の肩書持っとるからな。
 蘊蓄でも垂れたろ」


「あれしてやれてたらなあ、
 これしてやれてたらなあ、と思う事は有れど
 結局ゴテゴテの後手に回っとるのが現状や」


「俺はそういう意味で【後ろ】って言葉をあんまり好かん。
 ただのイメージの話やけどもね」


「それでも……言霊というのは往々にして在る」



まして俺は神秘を知ってもうてる。
言葉に宿った意味がを引きずるように離れてくれへん。

前という言葉に肯定的が意味があるのと同じく。
後という言葉に否定的な意味はどうしても付きまとう。




「あん時……もう八年前か。
 対神秘学術技能規則における第七条の違反。
 辰巳の神秘率が異常に跳ね上がって……
 辰巳が【現実離れ】を起こしかけた時」


「俺は辰巳がどういう家庭環境に置かれてんのかも
 どういう事情に巻き込まれてんのかも
 なぁーんも知らずに、のほほんと東京で暮らしとった」


「正月に法事に、親戚の集まりで会うた時に聞いとけば。
 ちょくちょく、月一でもええから電話しとけば。
 何か一つでも違ってたらな、とは思うとる」


「……今ですら、何かしてやれてんのかね俺は。
 分からん。答えなんか出えへんのかもなあ」






「せやから、辰巳が友達と話してんの見た時。
 俺もその……何というか。結構安心してな。
 しみじみと東京に来させて正解やったなあ思うて。
 八年前に俺がやったことは、少なくとも無駄やないなって」


「んはは、親でもねえのにしゃしゃり過ぎか。
 ……辰巳と仲良うしてくれはって、ホンマおおきにね」