RECORD
開かずの扉_01

「整理しよう」

「うん」

「つまり……ここは灯村っていうひとつの“村”で。
お前はその住人の戸星 よたであると。」

「うん」

「だが村の中でも超がつく除け者のお前は満足に風呂も入れず、
この狭っ苦しい場所を秘密基地兼裏口にするしかないと」

「うん」

「更には俺みてえな余所もんが来た試しもねえから
どう対応するかも測りかねてるってワケか。
わかるようなわからないような……しかしまあ寝床として悪くはないか」

「…………」

「やめろよーそんな邪魔な置物見た時みたいな目をよー
このド級の暗闇ドらやみの中で外うろついたら迷子んなっちまうしさ。ダメか?」
男から見て、この少年、ひいてこの“村”は『不思議』という単語で収まらないいくつもの違和感を抱えていた。
周囲を見回す。あの潜戸を抜けた先にあったのは、せいぜい人が3人入れるかというところの物置。
それも乱雑に農具やがらくたが仕舞われている。
扉らしきものは見当たらなかった。
戸棚らしきものが壁一面を埋めているようで、それに塞がれたのだろう。

(籠城みたいだな)
少年の口から放たれた説明と今の環境とを併せて、男の感想はシンプルに纏まった。
方角を思い出しながらメモ帳を取り出す。潜戸からこの部屋までの位置関係をざっと書き示した。
それから単語についても簡素に書き留める。

「とりま今日はここ借りるわ。んで明日出る。
お前ついてく?外出たいんだろ、そんな星好きならさ」

「どうして?」

「ンだよどうしてって。いやピンと来てなさそうだな。
いちからじゅうまで説明してやるからよく聞け」

「まずお前の住んでるココはヤバい。スゲーヤバい。
どんくらいっつーと今すぐ通報したいレベルでヤバい。あヤベ忘れてた、ここ電波通じる?」

「でんぱ?」

「いちからじゅうまで説明すんのメンドくなってきたなこれ」

「別にいい。山は下りない。
湖までなら案内できる。でも、僕は下りない」

「え~~~~~~~~~~
んだよも~~~~~~~~~~~~~~~」

「静かにして」
少年はにべもない態度を崩さず、立てかけられていた板材をひとつ取り出す。
それから、棚に鎮座されていた置物を手にした。

「なんで出ねえの?なんか脅されてるとか?俺けっこう強いけどどうする?
つかそれ……何?」

「これ?のびどり」


「鳥スか」

「のびどり。あいさつして」

「あいさつ」





「………………」

「よっすのびどり。俺は灰原 臣。まーよろしくやろうぜ!」

「!!」
「のびどりの声わかる!?」

「エッ↑↓!?あ~~~~まあまあ!!おう!わかる!!」

「静かにして」

「今のはお前もまあまあうるさかったくね?」
(ヤベ~~~~なんか今死or死の選択肢で死引いた気分なんだが)
男の一喜一憂には目もくれず、少年は“のびどり”と呼ばれる置物を大事に抱えながら潜戸へ向かう。
男が追うかと一歩踏み出すと、振り向いて口を開いた。

「……何?」

「んやんや、お前が外出んなら俺も出よっかねえ~って。
ここ空気ドブいし」

「ふうん?……のびどり、どう?」


「だって」

(オイこれどっち?)
「お、お~~!オッケ~!!了解!!」

「危ないから。ゆっくりついてきて」

「セ~~~ッフ!!!!」

「何……?」
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☆人物紹介☆

俺
まとも枠。

よた
ちょっとヤバい。

のびどり
よた曰くは喋る。