RECORD

Eno.1807 七條 くもりの記録

良い子



くもりは良い子ね。
くもりはこれをした方が良いわ。
くもりはこれが幸せなの。
くもりは幸せね。
くもりの幸せを全部用意してあげる。


 お母さん、お父さん。
 私は幸せだよ。
 私は良い子でいるよ。
 2人の言う通りにしているよ。
 


暗い路地を1人、腕を抑えて逃げるようにゆらりと歩く。
腕からは血が流れて、指を伝いポタポタと地面に点々とした跡を作る。
周囲を見て誰もいないことを確認すると神秘で煙管を作り出し、
スゥと煙を吸うと、フゥと白い煙を吐き出した。
身体が煙に覆われ、滴る血の流れが止まる。

「あーあ、汚れちゃった…」

コートに着いた血を見て溜息。
汚れたのは果たしてコートだけか。

ガサリと地面に踏む音が耳に入る。
そちらに視線を向け、煙管を構えてスゥと煙を吸う。
フゥと吐き出した煙は黒色。
パタリと倒れるは人の形をした怪奇。

もう敵がいないことを確認すると、
ズルズルと壁に寄りかかりながら座った。


 帰らなきゃ…幸せを用意された世界。
 帰らなきゃ…幸せのために。
 帰らなきゃ…期待に応えるために。
 帰らなきゃ…望まれたとおりに生きなきゃ。

 …その幸せは、誰のため?



『はやくアザコロに戻ってきてね』



「アタシの帰る場所は……」

ぎゅっと自分を抱き締め、顔を伏せた。