
「改めて、幸人様、ようこそおいでくださいました」

「その、村に入ってから皆さんそう呼んでくるんですが。幸人様というのは、一体……?」

「幸人様とは村の外からのお客人、我々の村に外から幸福を運んできてくださる方々……」

「……とのように、せっかく来てくれたお客様をありがたって独自の敬称を付ける習わしですよ。この村にいる間は皆そう呼びますでしょうが、どうかお気になさらず。」

「そ、そうですか。そういうことなら安心しましたが」

「何か不安なことがございましたら、いつでもお申し付けください。」

「なら、村長さん。一つ聞きたいことがあるのですが」

「……なんでしょうか?」

「村長さん。あなた達の、その、目。」

「人を……殺して、いませんか?」
……
儀式は完遂された。
──────────────────────────────────────────
……

「何をしていらっしゃる、幸人様。こちらは禁制の地でございます。認められた者以外入れない」
……臭いがする。

「匂い、でございますか。」
……人を生きたまま、焼いた匂いだ。
人を生きたまま焼くと、血が蒸発した臭いと、油がゆっくり焼けた臭いがする。
お前達は、一体何人焼いた?

「……どこから嗅ぎ付けたかは知りませんが、随分と鼻がお効きになるようで」

「残念ですが余計な事を知った方には、すぐ供物になっていただく。」

「準備が済むまで眠っていただきましょう。では、おやすみなさい。」
男は、目の前の存在に手のひらを向けた。
男が望めば、其は力を貸し、望んだ事象を叶える。
……
………………はずだった。

「……?何故、”助け”が、起こらない?」
お前のその”助け”とやらは
それはお前達が崇めていた存在が貸した力だ。
もう殺した。お前たちの神とやらは既に凋落している。

「……貴様ァッ!!!!」
男は懐にある短剣を抜き放つと、その存在に向って振るう。
刃が敵対者に届こうかという時──────
──────刀身は溶け、衣服は自然発火し、肌は焦げ始めてていた。

「……へっ?」

「──がァッ!?なんで、体が、燃えてッ、そんな、熱いッ……!?!!」

「……私はッ、この村を存続させるためにッ……!!!!!」

「存続、サセル、タメ、ニ……?」
ひとしきり燃えた後に、男が立っていた所には、黒ずんだモノだけが残った。
……哀れ。もうとっくに憑かれていたのだ。
この土地に巣食う其にも、己の罪にも。
其は静まり返った農村を見下ろす。

「……この土地はもう、幽世に染まり過ぎている」
温度が、上昇、する。
「……最早、焼土に沈める他無し」
■■村集団死傷事案
焼死者 二■■名
生存者 無し