RECORD

Eno.1883 夜住 奏の記録

神秘についての会話:書面、音声記録なし、閲覧不可

「--ちゃんはさ~……」
「俺の異能って、分かる?」



「調べようと思えば調べられますが、
 中身を覗くことになってしまいますよ。
 あまり良い気分にはならないかと思います」



「きみはそれを何時もは控えてる?」



「不快感を与えたくありませんからね。
 私だって、覗かれるのは好きではありません」



「えらすぎ……」



「お褒めいただきどうも」
「それで……覗かれたいんですか?
 必要があるなら、いいですよ。
 滅多に機会もありませんから」



「ちょっとわくわくしてる?」



「否定はしません。好奇心には勝てませんから」



「良識と好奇心の板挟み?」



「最低限の礼儀ですよ」



「俺には礼儀がないって言われてる気がしてきた……」



「あなた、初対面の会話を思い出してくださいよ……」



「その節はすみませんでした……」



「改めてくださいます?」



「ません」



「なら、謝らなくて結構ですよ。
 全くもう……」






「あなたは……」


「寄生生物のようなものですね。
 人の身体を修復して、乗っ取る……と言えば、聞こえが悪いのですが」


「臓器移植をした人間の嗜好が、移植元の人間に似通う」


「そんなお話があります」


「そういうものに近いように思えます。
 あなたはかつて、頭部を損傷したのでしょう?
 恐らく、本来であればもう目覚める事はなかったのだと思いますが」


「あなたは……私たちは、どうしたって、
 あちら側に触れてしまいましたから」


「不可逆の変化です。時間の流れと同じですね」


「あなたはそれが嫌だった。
 何も朽ちてほしくはなかったし、
 何も変わってほしくはなかった。
 永遠に、ただ友人と一緒に居たかった」



「あなたの体液には、停滞の概念が宿っているように思えます」


「皮肉ですね」


「もう戻れなくなってから……、
 私たちは、過去を眺めてしまう。
 何より大切な宝物のように」


「もう戻るよすがは、どこにもないのに……」



「あなたは年を取らないかもしれません。
 何せ、停滞があなたの底にある。
 あなたは死なないかもしれません。
 何せ、死のうにも傷口が開いた端から止まってしまう。
 あなたはどうしたって続いてしまいます。
 もし、死にたくなったのなら……」





「ろくでもなくて笑っちゃうよ」


「どう返事したっけな」


「忘れちゃった」