RECORD
Eno.279 葦原奏翔の記録
0-3:発芽、成長、そして――開花
あれから2週間くらい入院し傷の抜糸と退院で夏休みの大半が潰れた中学1年の夏
あの日から俺は演奏をする気になれなかった
両親はそんな俺を『あんな事が有ったのだから仕方ない』と慰めてくれたけれどその心境はきっと困惑と悲しさだった
理解っている、理解っているけれどピアノもヴァイオリンも他の楽器も今まで楽しく弾けたのに今は弾く気にどうしてもなれなかった
その心は暗く中には1つ小さな何かが未だ巣食っていた
其れから夏休みが明けて
通っていた私立の中学に登校してみれば何処で聞きつけたか事件に関する報道者が何人か居て不快になりながら退け教室へ
久々の教室
教師やクラスメイトは何処となく皆、余所余所しく中には煩わそうな目をして此方を見ていた
聞けばあの事件の日からずっと取材に振り回されてうんざりしていたという
"お前が事件に巻き込まれたせいで記者から家にまで押しかけられた"
"お前、SNSでも炎上しているからな
『1年前に参加者を一人死に追いやった』って"
"貴方のせいでほんっと気が休まらなかったわ"
"記者達がずっとついてくるせいで転んで怪我したんだけど、最悪"
"学校中、大騒ぎよ
大事にしないでほしいわ、勉強や部活に集中出来ない"
罵倒、誹謗中傷、陰口
皆、思い思いに口にする
クラスだけでなくSNSでも
"コンクールで演奏して人が亡くなるとか呪われてるじゃん、やば"
"もしかしたら不正だったりして、金持ちってそういう事しそうで怖いわ"
"金持ち嫌いだからラッキーw"
"参加するからにはそういった事や刺されるのも覚悟の上だろ、嫌なら辞めればいい
自己責任"
などと言った書き込みが一定数有ったしそれらは時を立つにつれ、感化された者達も己のフラストレーションをぶつけるが如く誹謗中傷を始め、続けてそこかしこに拡散されていく
彼は耐えきれずある日、担任に助けを求めた
誰が何を言ってくるか分からないから持っていたボイスレコーダーを2つばかり証拠にする為に隠し持っていた
その時、偶々電源を切り忘れていたのかそれらは録音状態のままだった

『勘弁してくれ、お前の問題に振り回されるのはもう嫌なんだよ
この程度ほとぼり冷めたら皆、飽きるんだから大事にしないで黙ってろ
大体、お前は親御さんや家が裕福なんだから演奏しなくたって何の苦労もないだろ
此方は家族養ったりするのに手一杯だし職を失う訳にはいかないんだよ』
担任は彼の助けを求める手を拒絶し
言葉を弾圧、排除したのだ
パキリッ
其れを言われた瞬間、彼の中で何かが罅割れたようなそんな気がした
その時、心に巣食っていた其れは急激に成長し次第に彼の心を深く広く蝕んだ
周囲への不信や警戒を強める様に
防衛本能へと至れる様に
良いだろう
誰も彼も好き勝手に宣い
危害を加えてくるだけの敵しかいないのならば
『誰も助けてくれないのならば己の身は己が守る』
防衛本能に侵されながらそう己に誓った時
彼にはもう踏み止まる術も相手にかける情なんてものも残されてなんかいなかった
あの日から俺は演奏をする気になれなかった
両親はそんな俺を『あんな事が有ったのだから仕方ない』と慰めてくれたけれどその心境はきっと困惑と悲しさだった
理解っている、理解っているけれどピアノもヴァイオリンも他の楽器も今まで楽しく弾けたのに今は弾く気にどうしてもなれなかった
その心は暗く中には1つ小さな何かが未だ巣食っていた
其れから夏休みが明けて
通っていた私立の中学に登校してみれば何処で聞きつけたか事件に関する報道者が何人か居て不快になりながら退け教室へ
久々の教室
教師やクラスメイトは何処となく皆、余所余所しく中には煩わそうな目をして此方を見ていた
聞けばあの事件の日からずっと取材に振り回されてうんざりしていたという
"お前が事件に巻き込まれたせいで記者から家にまで押しかけられた"
"お前、SNSでも炎上しているからな
『1年前に参加者を一人死に追いやった』って"
"貴方のせいでほんっと気が休まらなかったわ"
"記者達がずっとついてくるせいで転んで怪我したんだけど、最悪"
"学校中、大騒ぎよ
大事にしないでほしいわ、勉強や部活に集中出来ない"
罵倒、誹謗中傷、陰口
皆、思い思いに口にする
クラスだけでなくSNSでも
"コンクールで演奏して人が亡くなるとか呪われてるじゃん、やば"
"もしかしたら不正だったりして、金持ちってそういう事しそうで怖いわ"
"金持ち嫌いだからラッキーw"
"参加するからにはそういった事や刺されるのも覚悟の上だろ、嫌なら辞めればいい
自己責任"
などと言った書き込みが一定数有ったしそれらは時を立つにつれ、感化された者達も己のフラストレーションをぶつけるが如く誹謗中傷を始め、続けてそこかしこに拡散されていく
彼は耐えきれずある日、担任に助けを求めた
誰が何を言ってくるか分からないから持っていたボイスレコーダーを2つばかり証拠にする為に隠し持っていた
その時、偶々電源を切り忘れていたのかそれらは録音状態のままだった

「担任に助けを求めたさ、両親に心配かけたくなくてな…そしたら其奴はなんて言ったと思う?」
『勘弁してくれ、お前の問題に振り回されるのはもう嫌なんだよ
この程度ほとぼり冷めたら皆、飽きるんだから大事にしないで黙ってろ
大体、お前は親御さんや家が裕福なんだから演奏しなくたって何の苦労もないだろ
此方は家族養ったりするのに手一杯だし職を失う訳にはいかないんだよ』
担任は彼の助けを求める手を拒絶し
言葉を弾圧、排除したのだ
パキリッ
其れを言われた瞬間、彼の中で何かが罅割れたようなそんな気がした
その時、心に巣食っていた其れは急激に成長し次第に彼の心を深く広く蝕んだ
周囲への不信や警戒を強める様に
防衛本能へと至れる様に
良いだろう
誰も彼も好き勝手に宣い
危害を加えてくるだけの敵しかいないのならば
『誰も助けてくれないのならば己の身は己が守る』
防衛本能に侵されながらそう己に誓った時
彼にはもう踏み止まる術も相手にかける情なんてものも残されてなんかいなかった