
真
「……取引、これでよかったんでしょ?」

八千代
「―― あぁ。これでええ。これで約束通り」

八千代
「あんたと契約を結んで、あんたも神秘を使えるようにしたる」

クロ
『……分からんな』

誠
「え、何が?」

クロ
『お前の兄がロクでもない人間だと言うことは知っている』

クロ
『勉強のできない人間すべてを見下していれば、
お前に対する当たりが強いこともそうだ。しかし』

クロ
『お前の加虐性は知らなかっただろう?
もし百歩譲って察していた可能性はないとは言い切れないが』

クロ
『それではこちらはどう説明する?』

誠
「…………確かに」

クロ
『あれが知りえないはずの事象を知っていた。
その上で電話をかけてきた』

クロ
『……匂うな。あれのことだ、
面白がってだとかマウントを取るための電話という可能性も充分あるが』

誠
「……確実に、誰かが俺のことを兄貴に喋ったやつがいる」

クロ
『そういうことだ。……しかし、誰が、何のために?』

誠
「クラスのやつ……は、兄貴のこと知らないし、
そもそも殆ど兄貴の話もしてない」

誠
「関西で繋がりがある怪異の誰か?
里帰りしたときにこっちでの生活を話したことは何度かあったけど」

誠
「……いや。いい。何かあったら、やり返せばいい。
だから探らなくていいよ」

クロ
「…………」

クロ
『―― 小僧。
表で生きようとするのは結構だが、一つ忘れているぞ』

クロ
『表で生きるならば、儂とは手を切ってしまえばいい。
そうすればもう何も毒されず、傷つけずに生きられる』

クロ
『しかしお前は加虐欲や暴走しかねない本能を克服する方針で動いている。
その理由を、忘れてはいないか?』

誠
「…………あ、」

クロ
『一番付き合いが長い存在は怪異かもしれない。
生きづらさに対してロクな解決を与えないし、むしろ生きづらくしてしまった張本人だ。
それでも、ずっとずっと長くお互いに付き合ってきたはずだ』

クロ
『儂は傍にいる』

クロ
『―― 相棒なのだろう?』

誠
「…………はは、あぁ、何で。
ずっとずっと、一緒に居てくれたのに、俺は、」

誠
「……うん、そうだった。
クロと一緒に居る事も諦めたくないから、『信仰』という繋がりを模索してることも。
お前だけは何があっても傍に居てくれることも。忘れそうになってた」

誠
「ありがとう。もう大丈夫。俺がどんな選択をしても。
お前だけは、ずっと変わらない唯一の相棒だ」

クロ
『―― あぁ』

真
「……取引、これでよかったんでしょ?」

八千代
「―― あぁ。これでええ。これで約束通り」

八千代
「あんたと契約を結んで、あんたも神秘を使えるようにしたる」