RECORD

Eno.385 桑田雪宗の記録

...


……

………

海中は何故心地が良いのだろうか。

水が、全身を包み込む感覚は、誰かに抱擁されているように思える。

望んでいた世界が見える。

彼女が虐められずにあの時みたいに笑っていた世界。

クラスメイトも、先生も、皆、皆優しく彼女を受け入れていた。


そうだったら良かったのに。叶わなかった世界を羨む。


         あの時傍観しかできなかった俺は。逃げることしかできない愚かさ。




嗚呼。此処はいいな。空想に入り浸る。




               朝が来なければいい。あの出来事からまた目を逸らす。

………

……



「…るほど。

「実現不可能な世界に、貴様は憧れているのか。」

カルマを思い出せとは言った。だが…」

「そちらの、もしもの世界ばかりを肯定して何になるのか。」

「現実を否定して何になる?極論だな。本当に貴様は…疎かな人間だ。」

「向き合え。赦すな。逃げるな。認めろ。」

「…話はそこからだ。まずは起きろ。馬鹿者。」






……


………




目が覚める。
雀が今日の始まりを知らせる。
窓から差し込む陽の光が暖かい。


久しぶりに良い夢を見れた気がする。最悪だ。夢から覚めてしまった!


ーーーカルマ。業。
過去の行為カルマにより、未来に影響を与える因果応報の法則のこと。

青年スバよ、衆生は、業を自分のものとし、業を相続し、業を胎とし、業を親族とし、業をよりどころとする。
業が衆生を分類し、優劣をつける。
        —パーリ仏典, 中部134, 小業分別経