RECORD
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両親でも兄貴にでもなく、ある旧友に電話をかけた。
そうして、今の自分の事情を簡単に説明する。

翼
「―― なるほどなぁ。
オカンらと、お兄さんからなぁ」

翼
「大体状況は把握したわ。
伊達にこちとら長いこと親友やっとらんからな」

誠
「すまんな。
お前のことは頼らへんつもりやったんやけど……
変な意地張っとる場合でもないな、ってなって」

翼
「ほんまによ。俺に電話かけてくるまで1年半かかっとるんやぞ。
毎回毎回お前は手遅れになるまで誰にも言わへんのやから
ええ加減にせえよ」

誠
「いや、だってこんな話してもしゃーないし。
お前とはそらあ、卒業のときの約束があったわけやし」

翼
「お前の一方的な決意(笑)に俺の意志があったみたいな
言い方やめてもらえます~~~???
俺は1年半ずーーーっと待ち続け取ったわけなんですけど~~~???」

誠
「何で俺こんな煽られとんの???」
二階堂 翼。関西に居た頃の、俺の親友。
基本的にちゃらんぽらんな人間で、所謂オタク気質なところがある。
ゲームと漫画が好きで、俺にもよく勧められた。
放課後に遊ぶ、とかはこっちの事情で殆どなかったけれど。
休み時間のときは基本的にずっとこいつが一緒だった。
そして、関西の友人は皆裏世界の事情を知らず、俺の家庭事情の問題を知っている。
中でも翼は5歳くらいから関わりがあり、一番友人歴としては長かったりする。

誠
「けど、関東行ったら地元の助けなしに生きてく、とか
大口叩いてこれになったんやから。
正直ごっつ恥ずかしい」

翼
「意気込みは眩しいけどプライド擦っとる場合ちゃうねんな。
ほんで、俺んとここうやって電話かけてきたんは、
人様に迷惑が~~~ とかほざいとる場合やないなったと」

誠
「ほんま言い方さあ~~~。
……まあ、そんなとこよ」

誠
「今のクラスメイト、皆ごっつええやつなんよ。
そんで俺がこんなんやから、気ぃ使わせてもうとる」

誠
「……あとは、それ以上に。
彼女と上手いこと関われんくなった、っちゅうか。
こんな俺に付き合わせてまうんが、申し訳なくって」

誠
「……こんな俺と、関わらんかった方が。
絶対に幸せやったやろって。そんな風にしか思えん」

翼
「…………」

翼
「えっお前彼女でけたん? マジ?
ザリガニ野郎に??? 俺おらんねんけど???
何のチート使ったん??? ずるい」

誠
「おい」

翼
「お前だけずるない? 俺彼女いない歴年齢やけど???
なんで??? お前のツラがええから???
寄越せや話聞く限りごっつええやつやんずっこいわ」

誠
「真面目に話っしょんやぞこっちゃあ!!
あと誰がやるか!! 俺の彼女やっちゅうねん!!」

翼
「おう言えるやんけちゃんと。
それはそれとしてずっこいから寄越せ」

誠
「はぁ~~~~~~???
俺の自慢の彼女を何でお前なんかに
渡さなあかんのんどいや~~~~???」
ご覧ください。
真面目な話をしても6割くらいの確率でおちゃらけるあいつのゆるさを。
それから、ガシガシと頭を搔くような音が聞こえてきたと思ったら
随分と大きなため息をつかれた。

翼
「……は~~~~~~~~。
お前ほんまにアホやな。マジで考えこんで落ち込むん
大好き人間ちゃんかよ。今に始まったこととちゃうかったわ」

翼
「んなもん、ごっつ単純な話やろがい」

翼
「お前の大事にしたいもんは両親なんか?
それともその彼女なんか?」

誠
「……そりゃ、彼女やけど。
あんな両親のことなんか」

翼
「ほなそれでええやん。
この際、一旦生まれたことがどうのこうのとか
くっっっそ重いことは一旦置いといてよ」

翼
「その彼女はそれでもお前の側に居る。
それが全てで、お前はそいつのこと大事にしたいんやろ。
せやったらそれでええやんけ」

誠
「それ、は、」

翼
「ちゅうか何悩むことあんの?
親の言いなりになりたいんとちゃうんやろ?
てか親の言いなりにならんためにそっち行ったんやろがい」

翼
「悩まんとやりたいようにせぇよ。
こっち帰ってこん時点でもう答え出とるやろ」
何も言い返せない。
その言い返せないというのは、親や兄貴の言葉を受けたときとは違う。
ただただ黙って、彼の言葉を噛みしめていた。
好きなものを語るときは熱くて、人間関係に対してはとてもさっぱりしている。
容赦なくこうやって言ってくれる、そんな関西の親友が居る。
ずっとずっと、支えてきてくれた人がいる。
見限らずに、こうしてふざけながらも叱咤してくれる。
だから、道を踏み外さずに生きてこられた。
本当に、ありがたいことだ。

翼
「あ、せや。
その兄電の対処は一個ええ案思いついたわ」

翼
「お前今度の日曜日までにヘッドフォン買ってこい。
ノーパソはあるやろ? せやったらいくらでも遊べるわ」

誠
「え、あ、おう。
別にそんぐらいやったらどうとでもなるけど……
何する気なん?」

翼
「そらあ、当日になってのお楽しみや。
何人かに声かけといたるさかい首洗って待ち侘びとけ」

誠
「ほんまに何する気なんよ!!」
ちゃらんぽらんなやつには違いないから、何されられるかは本当に不安!!
十中八九ロクでもない解決策を持ってくるぞあいつ!!
本当に大丈夫なんだろうなぁその方法!!