RECORD

Eno.232 月影誠の記録

9/25

夜21時半頃。
両親でも兄貴にでもなく、ある旧友に電話をかけた。

そうして、今の自分の事情を簡単に説明する。




「―― なるほどなぁ。
 オカンらと、お兄さんからなぁ」



「大体状況は把握したわ。
 伊達にこちとら長いこと親友やっとらんからな」



「すまんな。
 お前のことは頼らへんつもりやったんやけど……
 変な意地張っとる場合でもないな、ってなって」



「ほんまによ。俺に電話かけてくるまで1年半かかっとるんやぞ。
 毎回毎回お前は手遅れになるまで誰にも言わへんのやから
 ええ加減にせえよ



「いや、だってこんな話してもしゃーないし。
 お前とはそらあ、卒業のときの約束があったわけやし」



「お前の一方的な決意(笑)に俺の意志があったみたいな
 言い方やめてもらえます~~~???
 俺は1年半ずーーーっと待ち続け取ったわけなんですけど~~~???」



「何で俺こんな煽られとんの???」




二階堂 翼にかいどう つばさ。関西に居た頃の、俺の親友。
基本的にちゃらんぽらんな人間で、所謂オタク気質なところがある。
ゲームと漫画が好きで、俺にもよく勧められた。

放課後に遊ぶ、とかはこっちの事情で殆どなかったけれど。
休み時間のときは基本的にずっとこいつが一緒だった。
そして、関西の友人は皆裏世界の事情を知らず、俺の家庭事情の問題を知っている。
中でも翼は5歳くらいから関わりがあり、一番友人歴としては長かったりする。




「けど、関東行ったら地元の助けなしに生きてく、とか
 大口叩いてこれになったんやから。
 正直ごっつ恥ずかしい」



意気込みは眩しいけどプライド擦っとる場合ちゃうねんな。
 ほんで、俺んとここうやって電話かけてきたんは、
 人様に迷惑が~~~ とかほざいとる場合やないなったと」



ほんま言い方さあ~~~。
 ……まあ、そんなとこよ」



「今のクラスメイト、皆ごっつええやつなんよ。
 そんで俺がこんなんやから、気ぃ使わせてもうとる」



「……あとは、それ以上に。
 彼女と上手いこと関われんくなった、っちゅうか。
 こんな俺に付き合わせてまうんが、申し訳なくって」



「……こんな俺と、関わらんかった方が。
 絶対に幸せやったやろって。そんな風にしか思えん」



「…………」



「えっお前彼女でけたん? マジ?
 ザリガニ野郎に??? 俺おらんねんけど???
 何のチート使ったん??? ずるい」



「おい」



「お前だけずるない? 俺彼女いない歴年齢やけど???
 なんで??? お前のツラがええから???
 寄越せや話聞く限りごっつええやつやんずっこいわ」



「真面目に話っしょんやぞこっちゃあ!!
 あと誰がやるか!! 俺の彼女やっちゅうねん!!」



「おう言えるやんけちゃんと。
 それはそれとしてずっこいから寄越せ



「はぁ~~~~~~???
 俺の自慢の彼女を何でお前なんかに
 渡さなあかんのんどいや~~~~???」




ご覧ください。
真面目な話をしても6割くらいの確率でおちゃらけるあいつのゆるさを。

それから、ガシガシと頭を搔くような音が聞こえてきたと思ったら
随分と大きなため息をつかれた。



「……は~~~~~~~~。
 お前ほんまにアホやな。マジで考えこんで落ち込むん
 大好き人間ちゃんかよ。今に始まったこととちゃうかったわ」



「んなもん、ごっつ単純な話やろがい」





「お前の大事にしたいもんは両親なんか?
 それともその彼女なんか?」





「……そりゃ、彼女やけど。
 あんな両親のことなんか」



「ほなそれでええやん。
 この際、一旦生まれたことがどうのこうのとか
 くっっっそ重いことは一旦置いといてよ」



「その彼女はそれでもお前の側に居る。
 それが全てで、お前はそいつのこと大事にしたいんやろ。
 せやったらそれでええやんけ



「それ、は、」



「ちゅうか何悩むことあんの?
 親の言いなりになりたいんとちゃうんやろ?
 てか親の言いなりにならんためにそっち行ったんやろがい」



「悩まんとやりたいようにせぇよ。
 こっち帰ってこん時点でもう答え出とるやろ」




何も言い返せない。
その言い返せないというのは、親や兄貴の言葉を受けたときとは違う。
ただただ黙って、彼の言葉を噛みしめていた。
好きなものを語るときは熱くて、人間関係に対してはとてもさっぱりしている。
容赦なくこうやって言ってくれる、そんな関西の親友が居る。

ずっとずっと、支えてきてくれた人がいる。
見限らずに、こうしてふざけながらも叱咤してくれる。

だから、道を踏み外さずに生きてこられた。
本当に、ありがたいことだ。




「あ、せや。
 その兄電の対処は一個ええ案思いついたわ」



「お前今度の日曜日までにヘッドフォン買ってこい。
 ノーパソはあるやろ? せやったらいくらでも遊べるわ」



「え、あ、おう。
 別にそんぐらいやったらどうとでもなるけど……
 何する気なん?」



「そらあ、当日になってのお楽しみや。
 何人かに声かけといたるさかい首洗って待ち侘びとけ」



「ほんまに何する気なんよ!!」




ちゃらんぽらんなやつには違いないから、何されられるかは本当に不安!!
十中八九ロクでもない解決策を持ってくるぞあいつ!!
本当に大丈夫なんだろうなぁその方法!!