RECORD

Eno.1807 七條 くもりの記録

箱庭⑤



「どうしよう、これから」

神社にあった扉から裏世界へ逃げたものの、ふと冷静になって頭を抱える。

大学はどうなる?
就職はどうなる?

この期に及んで、まだ良い子だった時のレールが頭から離れない。
死んでしまおうと思った時から、この矛盾を抱えたまま。
ぐらぐらと道が揺れる。

「馬鹿ねえ……私が求められてるって言ったじゃない」

いつかの少女の声がまた頭に響く。
そうあれと求められた少女の声。

「……怪奇にもなれないくせに」

姿の見えない少女へと悪態をつく。
無意識少女はこうなるのが分かっていたの?
クスクスと笑う声に怒りを覚えると、
皮肉にも頭が少し冷静になった。

「世間体を気にするあの人達が中退させる訳が無い…
 内定だってそう。だから、落ち着いて」

ふう、と深呼吸をして乱れた髪を整える。
顎を上げて夕焼け空を目に入れる。
表でも裏でも今は、夕焼け。
しかしてこちらは沈まぬ太陽。

「困ったわ……逃げた後はどうすれば良いか聞いてなかった」

ポツリと言葉が零れ落ちた。
とりあえず戦ってみてはみたけど、話し合いが出来ると高を括っていた。
まさか本当に逃げることになるとは。

こくり、こくりと急に眠気に襲われる。
端末を確認すれば座敷牢にいたのは丸1日だったよう。

「…もう、疲れちゃった……」

今は幸せを探すことも億劫で。
よろりと座り、ぐたりと賽銭箱へ寄り掛かる。

「何にも、考えたく…ない……」

消えてしまえば楽になれる。
ただそれだけが頭に残り、裏世界の朽ちた神社で眠りへと落ちていった。