RECORD
豆腐製作録
朝に水につけた大豆が大きくなっているのを確認し、
台所に手際よく道具を並べていく。
今月三度目の豆腐作りの挑戦が始まる。
もともとは伝統的な豆腐作りを狙っていたが、
豆腐自体が硬く仕上がる傾向があり、
二度の挑戦とは違った現代的な路線で行くことにした。
元々は塩化マグネシウムを使っていたが、
今回は絹ごし豆腐向けというグルコノデルタラクトンを用意。
今までのようなボロボロな仕上がりで
終わる結果にはならないと思いたいところだ。
大豆を粉砕して磨り潰す。これを生呉と言うらしい。
ミキサーの中に大豆が放り込まれていく。
目を細かくするならフードプロセッサーの方が信頼できそうだが、
今回はミキサーを使用。なんなら浸漬した大豆は、
まだまだ鍋の中に残っている。
今回作りたい豆腐の量は1キロ。
前回、一度に大豆を磨り潰そうとして
ミキサーにいらない負担をかけてしまった反省を生かし、
二回に分けて、しかしその分長く水挽きすることで、
よりきめの細かい豆腐を作ろうという狙いがそこにある。
「生呉も既においしそう」
イメージは豆腐を固めずに崩したような状態なので、
原料でありながら結構直でイケるポテンシャルは感じる。
豆腐にぴったりの大豆を店員の人から聞いて本当に良かった。
でも作りたいのは生呉ではない。あくまでも豆腐である。
生呉をきめ細かく作ったうえで、記事には書いてなかったが
どう考えても裏ごしした方がおいしくなるだろうということで、
豆腐作りのオリジナルチャートを発動。
生呉のペーストをさらに新品の裏ごし器に通して、
これでもかというくらいクリーム状に仕上げていく。
まだ豆腐作りは3割も進んでいない。
しかし裏ごし器を通って出てきた生呉のあまりの美しさに、
どんな芸術作品よりも感動する自分がいたことに驚いたんですよね。
大型の鍋を用意。ここから15分生呉を煮る時間。
鍋に移したら、鍋の底にくっつかないよう静かにかき混ぜつつ、
100度を維持する。
……5分ぐらいすると、鍋から飛び出そうなくらい湧いてきた煮呉。
火加減を細かく調節しつつ、汗が入らないようにしながら
大量のそれを過熱する。
煮呉は簡単に焦げるという話を聞いているため、
熱い思いをしながらも必死にかき混ぜ、
煮立ったそこからは弱火気味にして煮込んでいくと、
煮呉はびっくりするほど泡だらけになっていく。
「熱すぎ……」
たっぷり煮立たせた煮呉を熱いうちに布を張った鍋に移していく。
ここからは煮呉を豆乳とおからに分ける、搾りの時間。
まだ蒸気の上がっている煮呉を包みあげ、ぎゅっと搾っていく。
鍋掴みのような分厚い手袋のおかげで、
意外にも搾りの作業は煮立たせる時ほど熱くはない。
牛乳のように濃厚な無調整豆乳が鍋の中にたっぷりと溜まっていく。
大豆の良い香りがする。
難しいことはしていないが単純に握力を使う作業で、
豆腐作りを大量に切り替えた一番の弊害はここに来ている。
二番目はおからの処理どうしようという部分。
おからは一旦放置して、豆乳の重さを量る。
「だいたい3.6リットル……」
つまり今回は3.6リットルの豆腐が出来上がることになるらしい。
テンションがあがる。
もう一度火を通し、ふつふつと湧いたのを確認して
耐熱のタッパーに移し替え、1リットル当たり0.3グラム、
つまり今回は1.1グラムのにがりを回し入れる。
うまくいってくれ。
豆腐のぐずぐず具合は今までのボロボロの豆腐と違う手ごたえ。
力技だがこのタッパーを蒸し器で蒸していけば
ついに絹ごし豆腐が完成するはずだ。
成形までの余裕はなく、どちらかと言うとタッパーの形そのままの
プリンのような仕上がりになる初めての豆腐。
だが、これはただのプリンじゃない。
正真正銘、大豆とにがりで一から作り上げた手作りの豆腐なのだ。
撮影した豆腐をWaveDにアップする。
3.6リットルの豆腐と書いたが、
タッパーを2つに分けて蒸したため、
タッパー1個は1.8リットルの豆腐だ。
まあ、言わなければバレないだろう。
家族に豆腐がついに完成したことを報告。
毎度毎度台所を荒らしてすみません。
だが、豆腐を作って当然終わりではない。
出来立ての豆腐を白だしに放り込み、
至高の豆腐の味噌汁をここに完成させる使命があるのだ。
そしてその時は訪れる。
いただきます。
………
………
………
おいしすぎる。

