RECORD

Eno.1015 灰原 よたの記録

開かずの扉_07

「うわあ生きてる!!?!?」

うるさ……」

「うるさくもなるだろやい!!!
 生きてるなら生きてるって言えや!!」





案内番は、厳重な檻の扉越しに少年を睨みつけた。
澱んだ瞳は侮蔑と憎悪と悔恨と、すべての負の想いを押し固めたような色で、
人を射殺せるほどの圧を秘めていた。



「どうだか分かりませんがね。
 生きてたのか、生き返ったのか。
 どちらにせよ……」

「定命の人間じゃあ、こんなことありえない。
 それはもう僕の子供じゃない。
 許してはいけない、忌むべき化け物だ」







「おい。起きたか。
 狩猟番が呆れていましたよ。随分と近場にいたらしいと。
 外の同胞を見つけて久々に気が高じでもしたか」



「…………」



「だが僕達にはもう分かっている。
 手前は山を下りられねェんでしょう。
 ここに一度縛られ、この村の住人になった」


「手前には“開かずの扉”は開けられない。
 どのみち、永年ここで苦しみくたばり続ける」


「生きてるとも言えねェし、死ねもしない。
 半端な不死身の怪物として、飢えて、野垂れ生きるだけ」



「……」



「なァ、もう楽になれよ。何度も言っただろう。
 手前の身代わりが何処に行ったか。
 ただそれだけ吐きゃァいい話でさ、何をまだ迷う。」









「……ごめんなさい」


「何の謝罪だ」



「ごめんなさい、……ごめっ、」

「何の謝罪だと訊いているんだ!!」



「…………っ…… ……」
「掟を 破った こと……」









「……はは」


「なんだ、今回は新しいのを聞かせてくれると思ったんですがね。
 掟破りの前に、手前は招かれざるモノだ。
 何時になったら自覚する?」



「……」



「まあいい。手前のおかげで、僕も汚れ仕事にゃ慣れました。
 懲罰の時間だ。おい、客人───」

「……」
「は?彼奴あいつどこに、」






  ゴッッ!!



「がっっ!?」





「じゃじゃーん!」
「見っけちゃったぜ、ココのカギ」


「が、っ゛ああ……はあ……!?
 ……!!」

「ほーれじっとしてろ、今ぐるぐる巻きにしてやっから。
 お前けっこうお喋りだよな。」

「だがよそ見は感心しねぇなあ〜!
 俺けっこうワルだから窃盗とかしちゃったりして」

「ば……馬鹿か!?何、人が話してる時に……!」

「すまんねえ〜!俺ズルいタイプの怪人なんだわ!」





「え……あ、え、え……?」





「よたァ!!!」

「何もわからんがまあ生きててよかったわ!!
 もう色々しゃーねえし行くぞ!!」


「えっ、」


「よくわかんねえけどその“開かずの扉”っての探しゃいいんだろ!
 どのみちソイツは案内なんかしちゃくれねえ!
 全部虱潰せばどっかで当たる!」





「ば、馬鹿……!?」

「両方から馬鹿と言われるとはな」






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【人物紹介】

灰原 臣
登山家の男。“外来人”。
行動が早く、手癖が悪い。


戸星 よた
村の少年。“咎人”。
思慮が深く、トラブルに弱い。


のびどり
置物。クッション性有。
状態は良く、伸びは悪い。


???
村の女性。“記録番”。
規律正しく、表情が硬い。


???
村の男性。“案内番”。
情に厚く、視野が狭い。