RECORD

Eno.22 雲隠 運太郎の記録

◯裸蛹

 

─2015年











 弟が拘束具で押さえつけられて、白い扉の先へ運ばれていく。




「兄貴!! 返事をしてよ!!」




 大きな声。
 何もおかしいと思えなかった。


「ごめんなさい! もうぶったりしません!
 いい子でいるから!!」




 何も感じなかった。


「嫌だ、蟻になんかなりたくない!!」




 名状しがたいこの状態はそう、
 無関心と呼ぶのだろう。


「……たすけ、て……運あに、」








 重い扉が音を立てて閉まった。
















● ─2017年



  無関心?


  そんなわけないだろ。


「あ、あ、りゅう、次郎、おれ………」




 脳が壊れそうなほどに痛い。
 次々と感情が流れ込んでくる。


 2年間、弟の泣き叫ぶ声を忘れていたわけじゃない。
 聞いていた。見ていた。ずっと覚えていた。
 でも何も感じなかった。今までは。

 なんで?
 君を守ると、決めたのに。

 ただ一つわかるのは
     俺は……弟を、眼の前で見捨てた。