RECORD

Eno.34 笛理 彗昴海の記録

/星運 /陰陽 /因囚 /篝火 /鏡望 /沈澱 /表裏 /忘却

僕は僕が好きだ。
だから、僕は僕の好いている人々が好きだ。
そんな存在を一回失ったのがひどく嫌だった。
それをもう一回味わいたくないので、僕の好きな人達には生きていて欲しい。

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こう見えて結構エゴイストだと、"自分"のことを認識している。
互いのことが大好きな二人が僕という一人を演じているわけだ。
当然、自己肯定感が過剰に高い"笛理彗昴海"という像が僕たちの間にはある。

そんなわけで、僕は僕の事を根拠もなく否定されたり、
思ってもいないことを理由もなく決めつけられるのがそんなに好きではない。
...まぁそれにしたって、あの日の保健室で泣き怒ったのは自分でもびっくりした。
うーん。僕は剣と焔が思ったより好きみたいだ。
できれば死なないでくれたらうれしいな...

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よく考えれば、光が無ければ世界は影の暗さなわけで。
そう考えると、「人間は本質的には悪である」って言った人の言わんとすることは
ちょっとだけ理解できる気がする。
最近会った邪悪は...例の老婆だろうか。
アレは正直、この話には適任ではないだろう。環境に歪められ、己を歪め、
どう考えても本質とは程遠いってことだ。
…あきらちゃんも歪まないといいけど。

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自分以外で、"存在"を示す星が二つ見えた人。
その上で親しくなった人間は、記憶が正しければ識君が初めての一人だった。
最近その星が一つになった。識君の知り合いだという転入生が来た。
...まぁ、そういう事だろう。
今度ノウハウなど聞いてみようか。正直、僕らの考えた方法が出来るという確証はない。

最近前よりずっと元気そうに過ごしてるよな、識くん。
僕らが分かれた時...同じように前より元気になるかな。

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そういえばどうなったんだろ、よすがちゃん。
一度縁が切れた。それから暫くは、彼女はやけに明るかった。

この感じには前例があった。あきらちゃんの時だ。

結局、本人以外が何もかも完全になり替わってしまおうというのがおこがましいわけで。
何もかも本人になりたかったら、なり替わったことすら忘れる必要がある。
それはなり替わったとは言えても、同じ存在が増えただけではないだろうか?
全てをトレースするなんて不可能だ。
まぁ、結局。個人的には、一度誰かがよすがちゃんに成り替わった気がする。
...あの後。よすがちゃんは助かったんだろうか?わからない。
僕が相手を別の存在と認識できるのは、縁が切れている最初だけ。確かめる術はなし。

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「人が死にたいと望む事に、絶対的な反論をすることはできない。
 それは人が己を苦痛から解放する最後にして絶対的な手段であるため」
そんな話を聞いたことがある。
でも僕は反論できる。「僕は貴方に生きていて欲しいと思う。」これだ。
僕は貴方じゃない。僕は貴方の死にたいという意思を否定できない。
でも逆に、貴方は僕の自由意思を否定することもできない。
...そうでしょ?

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イルミ...正直な話をする。どうせ全部バレてる感情だろうけど。

風呂の時。女子トイレに入る時。未だに僕の魂は認識を閉じる。
"自分"の体くらいはまぁ、見ざるを得ない時もあるが、
覗きというレッテルを自分に張ったまま分離したら...
僕は女の子に話しかけられる自信がない。

...それでも、僕は色々がもうだいぶ女子だ。
いくら魂は男でも、肉体的にも文化的にも...女の摂理はいくつもあるわけだ。
思考まで女子に寄ってきた自覚は、正直かなりある。

そのあたりが正直一番怖い。
僕らが二人に戻った時、男の自分に違和感を感じるだろうし、それで傷つくことが怖い。
...どうしようもないな。これは。男が女になるなんて言う話は、思ったより夢がない。

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僕らは近頃、過剰に思考が結びつきがちだ。もし...
このままうっかり、二人の魂が一人の人間になって。
僕らが元々二人だったことを忘れてしまったら。
それは僕が死んだも同然なんじゃないか。

...そもそも、実は僕は存在しなくて、魂が結びついたなんて嘘で、
本当はただ、僕の心が壊れていただけだったら?

本当は僕らは二人とも死んでて...僕らはそれを模倣した怪奇で、
そのことをさっぱり忘れているだけだとしたら?

…世界五分前仮説みたいなもので、考えても仕方ないのに。
ふと、考えると無性に怖くなって来る。

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僕は僕が好きだ。
だから、僕は僕の好いている人々が好きだ。
そんな存在を一回失ったのがひどく嫌だった。
それをもう一回味わいたくないので、僕の好きな人達には生きていて欲しい。

だから、それらが危ない時は。助けられるなら嬉しいと僕は思う。