RECORD
Eno.340 月待 よすがの記録
矛盾
何物も切り裂く剣と全てを防ぐ盾を用意した時に勝つのはどちらか。
必ず獲物を仕留める猟犬と標的を確実に射殺す槍、先に息の根を止めるのは?
数学の証明問題だってそう。矛盾が無いことを詳らかにすることが「正しい」とされる。
では人間に置き換えた場合はどうなるか。一貫した行動と原理、相反する感情を持つことは不可能なのか。
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矛盾した。神秘と怪奇、不思議なものをすべて証明さえ出来ればそれで良かったのに。
今までの縁はすべてそうして形作ったのに、あの時の自分は彼女にそう言った。
全部清算して畳もうと思っていたのに、自ら繋いで、結局そのせいで僕は今も生きている……といっても過言ではない。
けれど隣に浮季草斂華が居ることを後悔しているかと言われると、不思議とそうではない。
あの時確かに死んでも良かったはずなのに、今の状況に悲観しているばかりでもない。
この感情を矛盾と言わずなんというのだろうと、思っていた。
――――――――――――
月待よすがは、女である。
活発な幼馴染とよく遊び、女の子からは「男の子みたい」と言われることもあった。
父は子の女らしさを好まず、子もまたそれに従った。
けれどその前提が覆されることはなく、例え同性と恋愛の真似事をしてみても侵されることのない定義がある。
では、浮季草斂華の場合はどうだろう。
彼女が自分に明かしたこと、昔の記憶と違和感と、矛盾。
そうした違いを感じた時、ましてや指摘された時にはどう思うのだろう。
月待よすがにはそれが分からない。
彼女がどんな時に苦しんで、楽しんで、■■■たいのか、分からない。
どんなものが似合うのだろう?
本当は何が好きなんだろう?
全ての選択に気を遣って、皆の見える浮季草斂華を演じるのはどんな気持ちなんだろうと。
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いつかを境に、彼女からは花のような匂いがするようになった。
匂いも識別材料のひとつになるんじゃないかと言っていたからか、その香りは大きく変わらない。
青いインナーカラーと黄色い髪飾り。それさえあれば月待よすがにとっては彼女が男だろうと女だろうと青インナーちゃん。
それが揺らぐことがあれば彼女の意思次第で、それ以外に定義は変わらない。
僕の交友関係は、ぜんぶ相手の不変によって成り立っている。
服も、髪も、香りも、イメチェンなんてされようものなら途端に付き合いが破綻する。
だからこそ直ぐにでも切れる縁が望ましいのだけど…… 閑話休題。
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それが多分、彼女なりの"矛盾"に対する答え。
中途半端を欲する人間は、存外沢山いるらしい。
何とも単純明快な答えに、きっと沢山の紆余曲折を経てたどり着いて、それでもまた今後迷うのだろうな。
それでも、彼女がそうで在ってくれるうちは。
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それが多分、月待よすがの"矛盾"に対する答え。
必ず獲物を仕留める猟犬と標的を確実に射殺す槍、先に息の根を止めるのは?
数学の証明問題だってそう。矛盾が無いことを詳らかにすることが「正しい」とされる。
では人間に置き換えた場合はどうなるか。一貫した行動と原理、相反する感情を持つことは不可能なのか。
「僕さ、――……」
「人の顔、認識できないから」
「シンプルな話……そういうタイプの"気にしない"しか、あげれなくてもいいなら」
「仲良くしたいってのは……僕としては神秘関係なく、思った。……かなー……」
矛盾した。神秘と怪奇、不思議なものをすべて証明さえ出来ればそれで良かったのに。
今までの縁はすべてそうして形作ったのに、あの時の自分は彼女にそう言った。
全部清算して畳もうと思っていたのに、自ら繋いで、結局そのせいで僕は今も生きている……といっても過言ではない。
けれど隣に浮季草斂華が居ることを後悔しているかと言われると、不思議とそうではない。
あの時確かに死んでも良かったはずなのに、今の状況に悲観しているばかりでもない。
この感情を矛盾と言わずなんというのだろうと、思っていた。
――――――――――――
月待よすがは、女である。
活発な幼馴染とよく遊び、女の子からは「男の子みたい」と言われることもあった。
父は子の女らしさを好まず、子もまたそれに従った。
けれどその前提が覆されることはなく、例え同性と恋愛の真似事をしてみても侵されることのない定義がある。
では、浮季草斂華の場合はどうだろう。
彼女が自分に明かしたこと、昔の記憶と違和感と、矛盾。
そうした違いを感じた時、ましてや指摘された時にはどう思うのだろう。
月待よすがにはそれが分からない。
彼女がどんな時に苦しんで、楽しんで、■■■たいのか、分からない。
どんなものが似合うのだろう?
本当は何が好きなんだろう?
全ての選択に気を遣って、皆の見える浮季草斂華を演じるのはどんな気持ちなんだろうと。
「滅茶苦茶生きづらいです」
「色々と申し訳ないしさ。両親から、元の"斂華"を奪ってる様なものだから」
――――――――――――
いつかを境に、彼女からは花のような匂いがするようになった。
匂いも識別材料のひとつになるんじゃないかと言っていたからか、その香りは大きく変わらない。
青いインナーカラーと黄色い髪飾り。それさえあれば月待よすがにとっては彼女が男だろうと女だろうと青インナーちゃん。
それが揺らぐことがあれば彼女の意思次第で、それ以外に定義は変わらない。
僕の交友関係は、ぜんぶ相手の不変によって成り立っている。
服も、髪も、香りも、イメチェンなんてされようものなら途端に付き合いが破綻する。
だからこそ直ぐにでも切れる縁が望ましいのだけど…… 閑話休題。
「暴けるのに暴かない、中途半端なのが丁度良いんじゃないかなって」
それが多分、彼女なりの"矛盾"に対する答え。
中途半端を欲する人間は、存外沢山いるらしい。
何とも単純明快な答えに、きっと沢山の紆余曲折を経てたどり着いて、それでもまた今後迷うのだろうな。
それでも、彼女がそうで在ってくれるうちは。
「斂華ちゃん。好きだよ」
それが多分、月待よすがの"矛盾"に対する答え。