RECORD

Eno.268 飯屋 彩禍の記録

『遡る記憶』(1)

「ん?なんで誰もやりたがらないようなことを率先してやっているのか、だって?」

「そうだなあ、やりたくなくても誰かがやらないといけないわけじゃない?
嫌々渋々やるくらいならわたしがやります!くらいでやった方が気分良くできるかなって」

「それにわたしは皆が笑顔で集まってるのを見ているのが好きだから―皆は損な役回りなんて言うけれど、わたしはそんな風に考えたことはないかもね」

姉は私と同じ名前の読み方で「彩華さいか」という。
双子だから同じ名前にしたそうだ。
こうすれば見分けられなくても大丈夫だから、と。

だけどそれが、
歪みを生んだ。

「なんで?悪いのはわたしだよ」
「わたしが上手くできないから」
「でも」
「彩禍はすごいね、わたしの自慢の妹だよ」

名前が表す通り、妹である私は姉に比べれば相当に雑な扱いを受けてきた。
―私はやらないといけなかった。
全てを。

―やりすぎてしまったのだろう。
無論、自覚はなかったとしても。
私には感心もなかったのだろうと。
そう、思っていた。

「わたしなんていなくても」
「きっと上手くやっていけるよ」

違う。そうじゃない。
私は―

「なんで?」
「わたしがいないとダメなの?」
「そっか」
「嬉しいな」
「ごめんね」


違う!
姉は両親の愛情を一身に受けてきたはずなのに。
何が足りなかったのだろうか。
すっかり気を病んでしまっていた。
私は何を間違えたのだろうか?
何れにせよ。

私が頑張らないといけないんだ。
彼女の分まで。