RECORD

Eno.232 月影誠の記録

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「八千代さん、お久しぶりです」


八千代
「よう来たなぁ。すまんな、やっぱ11月はごっつ忙しいてな。
 宿も貸すつもりやってんけど、
 本音言うと他のとこ泊まってもらえるんが助かるわ」



「翼の家にお邪魔できることになりましたから。
 ちょっと距離があってもクロのお陰ですぐ戻ってこれますし」


八千代
「なんやったらあたしとかアザーサイドコロニストの支部の
 手伝いとかないときは関東に帰ってもええからな」


八千代
「ちゅうても平日は夜以外殆ど手伝ってもらうことんなるけど。
 いやほんますまんな、ほんま猫の手も借りたいねん」



「そのための俺達ですから。何でも言ってくださいね」


八千代
「ほんま助かるわぁ。ほな、誠はんは一旦翼んとこ行ってき。
 この土日と月曜はフリーや、好きなだけ積もる話してくるんやで」



「はい、お言葉に甘えて。それじゃあクロ、お願いね」


クロ
「…………」


クロ
『……いや、誠。すまないが少しだけ二人で話させてくれ。すぐに戻る』



「……? 分かった。じゃあ河童に挨拶してくるわ」



Tips!:八千代さんの出身は河童で有名な地だ! 表にもいるぞ!





八千代
「ほんなら誠はんに手伝ってもらう前に、クロはんにはまず――」


クロ
『八千代』


クロ
『お前だったんだな』


クロ
『真が誠に悪意ある電話をかけてくるように仕向けたのは』


八千代
「…………」


八千代
「……しゃーないやん。誠はんは群れから去ろうとしょる」


八千代
「やっと群れが増えたのに。
 やっと……やっとあたしは、クロはんに返せると思たのに」


八千代
もうちょっとやったやん! なぁ! もうちょっとやん!
 クロはんは我慢しすぎやねん!

 何でなん、何でクロはんは……」


八千代
「あいつのこと……食わへんの……食うてもうたら全部丸う収まるやん……」


クロ
『……私は、神として定められた身。
 例えそれが、本来の神ではなく分霊であったとしても。
 神としての道を踏み外す気はない』


クロ
『それに。老体には変わりないが、命の終わりは人が信仰を忘れたときだ。
 だからまた、望む者を探せばいい』


クロ
『人の子は、人の子の思うがままに生きるべきだ。
 その道に神が望まれたならば、我らはそれに応えよう』


クロ
『しかし、望まれないのであれば。
 また望む者が現れるのを待てばよい』


クロ
『……違うか?』


八千代
「……それ、あんたが辛いだけやん……なぁ、」


八千代
「……返させてよ、あたしのせいなんやから……
 そないなってもうたん、あたしのせいなんやからさあ……」


クロ
『…………私は、ただお前に生きてほしかったから。
 だから、力を授けた』


クロ
『そのつもり、なのだがなあ』



クロ
『私は、傷つけることしかできないのだろうか』



クロ
『…………』


クロ
『……誠には黙っておく。記憶の共有もしない。
 しかし、これだけは警告しておく』


クロ
『あいつに過度な危害を加えるようなら。
 私はお前に相応の罰を与える』


八千代
「……元よりそのつもりや」


八千代
「あたしも譲れんもんがある。
 ……悪いけど、逆らわせてもらうからな」