RECORD

Eno.232 月影誠の記録

11/5

「……敵対怪異の討伐、確認!」


「皆お疲れさ~ん この時期忙しい大人が多いから
 わんこの手も借りたいねん。助かったわ」


クロ
「ウォウ!!」
(訳:狼だ!!)



「イベントが集中しがちですよね、この時期。
 お力になれたら幸いです」


「おまけに皆が皆戦えるんとちゃうからな。
 ほんで、南側は人多いけど中部って見放されがちやし」


「流石兵庫の「謎」と言われがちな部分よなぁあっはっは」



「笑ってる場合あったら村おこしし……てました。すみません」




「にしても」


「誠、ええ動きするようになったっちゅうか」


「えらい理性的っちゅうか。
 いや動物っぽいんは変わらんねんけど、なんやろな」


「クロと仲良うなった?」


「そうそう、そんな感じ!
 なんか東京行く前より、息の合い方がようなった気ぃするわ」



「お、本当ですか? ありがとうございます」



「最近、ちょっと自分の戦い方とか理由を思い直す機会に恵まれたので。
 その影響かもしれませんね」


「や~ ひよっこのときのあのたどたどしさもないなったし、
 最初のクロのあのハラハラした様子なんか
 授業参観を見守る親っぽかったけどな」


クロ
「ウォウ! ウルルルルァッ!」
(訳:仕方ないだろう! 子供に危ない橋を渡させているのだぞ!?)



「じゃあ今はそれだけ信頼してくれてるってことなんだ」


クロ
「…………」


クロ
「…………フンッ、ウルル」
(訳:…………ふんっ、まさか)



「分かりやすいな」





本能を抑えるために、クールダウンを挟む。

……ふと、恋人のことを考える。
彼女は裏世界の方で……恐らく、何か危険なことに足を突っ込んでいる。
急に部屋に来て様子がおかしかったこともあったし、死にかけたこともある。
その理由は深く聞かなかった。話されることもなかった。
頼る術こそ話したが……多分、あくまで彼女にとって俺は『最終手段』。
裏世界で一緒に何かを成すことも、頼られることもないだろう。



「―― 裏世界では、俺は求められていないらしい」



「それについてとやかく言うつもりはないよ。
 心配をかけたくないとか、巻き込みたくないとか。
 そういう感情から来てるんだろうな、って分かってる」



「第一、頼れって言うほども俺自身は強くない。
 俺自身の戦い方も危なっかしいらしいし。
 頼りたくないだろうな~って分かるよ」



「それに、秘密を全部共有しなければ親密になり得ないってわけでもない。
 隠し事も、嘘も。良き人間関係を築く上で大切なことだ」



「…………」



「……あの強さや、芯のブレなさは。
 孤高、って表現するのが似合うよね」



「寂しさを纏った、孤独な強さ。俺にはないものだ」





「俺が今、望む強さは」



「最終手段として頼られたときに、期待外れにはならない強さ」



「何かあったときに、正しく在るための強さ」



「そして、それはクロがいないと成立しない」



「だから俺はこれからもクロと一緒に戦うよ。
 獲物を狩るということもそうだけど。
 こっちの世界では一心同体の相棒なんだ」



「……魂で結ばれている。そう言えるくらいになりたいね」


クロ
「…………」


クロ
『……急にどうした? 恥ずかしいことをペラペラと……』



「そっちだって。尻尾ぶんぶん振ってて説得力ないな」



「―― 要するに、これからもよろしくってことだよ


クロ
『よくもまあ、私達と対等になろうとなど
 頭が高いことを言うようになったな』


クロ
『……これが、我々……神と人と、本来あるべき姿だったな』




きっとこれが。
俺達が示す『信仰』の形だ。