RECORD

Eno.1469 風雷 透真の記録

大切な村の仲間が欠けた日(外伝)

これは俺がまだ少年だった頃の話だ。
遊び盛りな頃だったから遊ぶ時間が欲しいのに
風呂に強制的に入れられててな、
多分、風呂に苦手意識があったんだろうな。
俺はしばらくの間、風呂場が嫌いになった。

でも、あの頃の俺は銭湯が大好きだった。
お風呂上がり用の給水機に
何がしたいのか分からないサウナと水風呂、
お爺さんが変な言葉を言うマッサージチェア。
子供には不思議なものばかりで
テーマパークみたいなもんだよな。
で、あの頃の俺は我儘を言って
よく銭湯に連れて行ってもらってた。

で、そこで仲良くなったのが炭六爺さん。
毎日銭湯に入ってる変わり者で
ロッカーは必ず6番を選ぶこだわりがある。
着替え室のロッカー6番の鍵は
いつも真っ先に銭湯に入る炭六爺が持ってた。

炭六爺さんは良い人だった、
ユーモアのある人でノリも良かったし
銭湯にやって来る人達、皆んなと仲が良かった。
お風呂上がりの牛乳を買ってくれたりもした。

それで銭湯は楽しかったし良い思い出ばかり、
いつしか俺の風呂への苦手意識はなくなった。
だからさ、今思うと少し寂しく感じるのは仕方ないよな。

俺がまだ中学生の頃、炭六爺さんは亡くなった。
お医者様曰く老衰らしい。


それ以来、銭湯で6番ロッカーの鍵が
目に入ると炭六爺さんの事を思い出す。
幸せだった思い出とぽっかりと空いた日常。
誰かが居なくなるだけでこんなにも心が苦しくなる。

後から炭六爺さんの親戚から聞いた話だけど
最後の言葉は「おやすみなさい」だとさ。
いつも通り銭湯から帰って寝る前の挨拶。
なんと言うか、あっさりしてるよな...

まぁ、あの世があるなら
良い感じの風呂場があれば良いよな。