RECORD
Eno.88 御子柴 桜空の記録
「今日もありがとうございました、桜空先輩」
「いいのいいの、
おれのこれはお礼みたいなものだから」
後輩に対し、神秘や怪奇について意見を交わし、出来そうなところは分かりやすく説く。
そんなことを始めて、今日あたりでだいたい一か月は経ったころ、
二人の間で積み重なったメモはもう結構なものになってきた。
日ごとに自分の現状や、裏に触れて出会うことはどんどん増えていって、
そのたびに俺や千賀さんが一度かみ砕き、それからこうして二人で色々と考える。
牛歩といってもいい進捗だが、それでも一歩一歩前進を見せていた。
蜜奈ちゃんの持つ神秘の力について。
俺の失った異能と、受けた影響について。
まず俺は、もともと人らしい生活を心がけ、
言葉によって影響を及ぼす力を持ちながらも、
『御子柴 桜空』という人間であろうと、自分に言い聞かせ続けていた。
だから北摩市で言うところの神秘率が下がり、
そんな最中で人間の女の子と出会ったものだから"浸透"してしまった、という仮説に至る。
蜜奈ちゃんについては、まだ微弱な出力でしかないけど、
自分の体力、気力を霊的な暖かさに変えることができる、という見立てができた。
ただ熱を持つだけでなく、神秘に関する者に対しては、その存在を補填することができて、
そして俺は、似たようなことが行える人をもう一人知っている。
それは、照史さんだ。恐らくは"食に根付いた"力という共通項によるもの。
「こんど照史さんが様子見に来るときは、
何か教えてもらえないか、おれから聞いてみるね」
今までも彼はちょくちょく服や食料を送ってきてくれたのだが、
これを機にコーチとして来てもらうのもいいな、なんて思う。
わざわざ別の市で教員免許を取ったぐらいだ、なんてのは冗談として、
神秘について同じような目線から教えられるものもあるだろう。
これが蜜奈ちゃんの助けになればいいな、と思ったりして。
彼女の様子を見ると、少し食い入るような目つきでこっちのことを見つめていて。
そして共に暮らすうち、その目に対してある程度の理解が及ぶようになってきた。
「……今日も聞きたいんだあ、おれと照史さんのこと」
ぶんぶんと首を縦に振る。
そう、神秘に関する勉強が終わった後は、
いつも決まっておれと照史の話をする流れができていた。
男の人と女の子が接したり、男の人同士が絡んだりする作品を好む蜜奈ちゃんにとっては、
自分たちの過ごしてきた時間がとても素敵なものに感じるらしく、
実際歩んできたおれにとってはなんだか悪い気がしなかった。
さて、どこまで話していたっけな、前の市やさらにその前の市の話は粗方済んだんだけど。
あからさまに眼を輝かせる少女を微笑ましく見つめながら、
ならうんと過去の話をしようと思い返してみて───あれ、と首を傾げる。
「……どうしたんですか、先輩?」
「あ、ええと…… ……そうそう!
これは照史さんと二人で本当に何もない荒野を彷徨ってた時期の話なんだけど……」
辛うじて浮かび上がってきた、追放された後の世界の話を続けながら、
少し忘れてしまった部分がある気がして、これも照史に相談することに決めた。
……おれと彼って、何が切っ掛けで出会っていたんだっけ?
さよならを言うたび、少しずつ
「今日もありがとうございました、桜空先輩」
「いいのいいの、
おれのこれはお礼みたいなものだから」
後輩に対し、神秘や怪奇について意見を交わし、出来そうなところは分かりやすく説く。
そんなことを始めて、今日あたりでだいたい一か月は経ったころ、
二人の間で積み重なったメモはもう結構なものになってきた。
日ごとに自分の現状や、裏に触れて出会うことはどんどん増えていって、
そのたびに俺や千賀さんが一度かみ砕き、それからこうして二人で色々と考える。
牛歩といってもいい進捗だが、それでも一歩一歩前進を見せていた。
蜜奈ちゃんの持つ神秘の力について。
俺の失った異能と、受けた影響について。
まず俺は、もともと人らしい生活を心がけ、
言葉によって影響を及ぼす力を持ちながらも、
『御子柴 桜空』という人間であろうと、自分に言い聞かせ続けていた。
だから北摩市で言うところの神秘率が下がり、
そんな最中で人間の女の子と出会ったものだから"浸透"してしまった、という仮説に至る。
蜜奈ちゃんについては、まだ微弱な出力でしかないけど、
自分の体力、気力を霊的な暖かさに変えることができる、という見立てができた。
ただ熱を持つだけでなく、神秘に関する者に対しては、その存在を補填することができて、
そして俺は、似たようなことが行える人をもう一人知っている。
それは、照史さんだ。恐らくは"食に根付いた"力という共通項によるもの。
「こんど照史さんが様子見に来るときは、
何か教えてもらえないか、おれから聞いてみるね」
今までも彼はちょくちょく服や食料を送ってきてくれたのだが、
これを機にコーチとして来てもらうのもいいな、なんて思う。
わざわざ別の市で教員免許を取ったぐらいだ、なんてのは冗談として、
神秘について同じような目線から教えられるものもあるだろう。
これが蜜奈ちゃんの助けになればいいな、と思ったりして。
彼女の様子を見ると、少し食い入るような目つきでこっちのことを見つめていて。
そして共に暮らすうち、その目に対してある程度の理解が及ぶようになってきた。
「……今日も聞きたいんだあ、おれと照史さんのこと」
ぶんぶんと首を縦に振る。
そう、神秘に関する勉強が終わった後は、
いつも決まっておれと照史の話をする流れができていた。
男の人と女の子が接したり、男の人同士が絡んだりする作品を好む蜜奈ちゃんにとっては、
自分たちの過ごしてきた時間がとても素敵なものに感じるらしく、
実際歩んできたおれにとってはなんだか悪い気がしなかった。
さて、どこまで話していたっけな、前の市やさらにその前の市の話は粗方済んだんだけど。
あからさまに眼を輝かせる少女を微笑ましく見つめながら、
ならうんと過去の話をしようと思い返してみて───あれ、と首を傾げる。
「……どうしたんですか、先輩?」
「あ、ええと…… ……そうそう!
これは照史さんと二人で本当に何もない荒野を彷徨ってた時期の話なんだけど……」
辛うじて浮かび上がってきた、追放された後の世界の話を続けながら、
少し忘れてしまった部分がある気がして、これも照史に相談することに決めた。
……おれと彼って、何が切っ掛けで出会っていたんだっけ?